日高町の山あいに殿(との)という集落がある。我が家の野歩きのホームフィールドである阿瀬渓谷へのアプローチ上にある小さな村だ。阿瀬川を渡る橋に「殿」という地名を見つけるたび、そのユニークな村の名前が気になる場所であった。近くに山城があったことに由来するようだが、詳しいことは知らない。
その村に蕎麦処がオープンしたのが今年の7月末。過疎対策の村興し事業。村の主婦たちによる心のこもったもてなしで、開店以来人気を呼んでいる。一度行ってみなくてはと思いつつ、一度目は定休日、二度目が満員で諦め、ようやく三度目の正直でお店を初体験することになった。
蕎麦処であるからメニューは蕎麦しかない。つなぎ無しの100%蕎麦粉が売りの手打ち蕎麦は、地元で生産されたものを使っているという。好みに合わせて、出汁に生卵や山芋をプラスできるシステムはよい。
木肌を生かした建物の内装は気持ちがよい。普通の座敷と、掘りごたつの座敷と、禁煙のテーブル席の3コーナーがある。
レジの横にはガラス張りの部屋があって、蕎麦打ちの様子を見ることができる。蕎麦打ち経験の無かった地元主婦たちが、隣町の床瀬そばで修行をつんで技術習得されたということだが、なかなか素晴らしい手際で蕎麦が打ち上がってゆく。
定食を頼んだ。蕎麦が蒸篭に2段、山菜天ぷら、大根なます、フキの佃煮、山菜おにぎり2個。これで税込み1050円。
まず蕎麦は大変美味しい。お盆に食べた春来の「てっぺん」蕎麦より美味しいと思った。出汁はちょっと甘味が勝っているが、私にはちょうどよい加減だった。ほかの料理も地元の食材を使ってよい味付けに仕上がっていて満足。ただし、山菜天ぷらは少し油っぽくて胃にもたれた。「てっぺん」の山菜天ぷらが絶品だっただけに、ここはちょっと減点。ちなみに、ナス、しし唐、カボチャ、クズ、ツルムラサキの5品。
阿瀬渓谷散策の帰り道、ここの美味しい蕎麦を食べに寄る楽しみが増えた。
営業時間 午前11:00~午後5:00 毎週火曜日定休
殿さんそば
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