コウノトリを助けた午後

午後の後半、ノビタキの飛来状況を確認しようと盆地北の水路沿いを巡回。暗渠の排水路へ続くトンネルの入口でコウノトリを見つけた。半身水に浸かったまま動かない。近くでケリの威嚇の声が聞こえた。

しばらく観察を続ける。首が震え、あきらかに低体温症に陥っている。関係部門に電話連絡し、レスキューを依頼する。待つ間、コウノトリは弱々しく翼を広げたが、それ以上脱出の行動を高めることはない。

ゆっくり前のめりになり、くちばしの根本まで水没した。体のコントロールが効かないようだ。橋を渡り、向こう岸に回りんで助けてやれるだろうか。そんなことを考えながら救助隊の到着を待つ時間は長かった。

見つけてから45分後、コウノトリの郷公園の獣医師と飼育員によって、コウノトリは無事救助された。よかった。間に合った。

獣医師に抱きかかえられた時、ようやく足輪から個体識別ができた。野上ペアのオスJ0001だった。今年で15才になる。祥雲寺放鳥拠点からソフトリリースされたコウノトリ。

野上巣塔では今期の産卵が確認されたばかりという。彼に何が起こったのか。ケリの威嚇におびえてパニクったのか。幸いなことに、収容後の適切な処置で低体温症も回復しつつあり、自力で立ち上がるようになったと、コウノトリの郷公園より連絡をもらった。順調にいけば明日リリースされるとのこと。よかった。

全国で200羽を超える野外コウノトリが空を飛んでいる。個体数の増加とともに、事故に遭うコウノトリの数も増えている。強い個体のみが生き延びる宿命の自然界ではあっても、目の前に死にそうな命を見つければ、なんとか助けたいと思う気持ちは、どんな人でも同じだろう。

2021.4.4 D7500+18-400mm

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