ときあかり


出張先に向かう車の中で流れたα-Station(FM京都)のスポット。数秒間のピアノの音に、私は何かとても大切なものを見つけた気持ちになった。記憶が消えてしまわないうちに、すぐ携帯電話のメモに「ありこ時あかり」と入力した。
ネット検索した。ユニットだと思った「ありこ」は、Aricoという名の一人の女性だった。「時明り」と思ったタイトルは、ひらがなで「ときあかり」だった。京都に出ることがあったので、街のCDショップを何軒か回った。どこにも「ときあかり」は置いてなかった。どうしてもあの音を聞きたかった。近くで療養している人の、弱った心にも届けてあげたい音だと思った。
たどり着いたAricoさんの公式サイトのリンクから、ネット通販で購入した。注文してすぐに送られてきたCDは、丁寧な梱包がしてあり、手書きのメッセージが添えられていた。そのメッセージは捨てずにCDジャケットの中に忍ばせてある。
CDは無垢の美濃和紙に包まれていた。初回限定盤とのこと。インナーにはAricoさんの直筆サインと「ありがとう」のメッセージがあった。さっそく聴いた全7曲は、心の中をゆるやかに流れる風のようであり、ピアノのタッチの一粒一粒がまったく濁りのない透明な湧き水のように、私の心身を潤してゆくのがわかった。
ああ、ピアノひとつで、これだけ清い気持ちになれるのかと思った。聞かせてあげたいと思ったその人は、涙を流しながら聞いたと私に告白してくれた。このアルバムに出遭えてよかったと思った。音楽が形の無いものへと変わりゆこうとする時代にあって、CDアルバムという形ある存在として、いつまでもそばに置いて大切にしたいと思う1枚に、久しぶりに出遭えた。
7曲にはタイトルがついている。Aricoさんの曲にまつわるエピソードもサイトで読める。でも、そんな先入観はまったく無用だ。ただただ、流れゆくピアノの音に身を任せているだけで、そこに透明な時間が流れてゆくのだ。
Aricoの部屋 http://www.soho-japan.co.jp/arico/index.html
撮影:Coolpix5000

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2 throughts on "ときあかり"

  1. 初耳のピアニストです。聴いてみたいです。
    レビューを読んだら、しらないうちにテレビや映画のピアノとして聴いていた可能\性が高いですね。
    ライブもカフェとかギャラリーとか・・・きっと素敵な空間なのでしょうね。。

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  2. インディーズなので、普通の流通には乗らないのでしょう。Aricoサイトにリンクされた通販で買うといいです。とても気持ちのよい買い物ができました。
    PCのお仕事中の合間にこのアルバムを流すと、ふぅーっと力が抜けて開放されますよ。モモンガさんにぜひお薦めします。

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