晩夏

往く夏に 名残る暑さは夕焼けを 吸って燃え立つ葉鶏頭
秋風の心細さはコスモス
何もかも 捨てたい恋があったのに 不安な夢があったのに
いつかしら 時のどこかへ置き去り
空色は水色に 茜は紅に やがて来る淋しい季節が恋人なの
丘の上 銀河の降りるグラウンドに 子供の声は犬の名をくりかえし
ふもとの町へ帰る
藍色は群青に 薄暮は紫に ふるさとは深いしじまに輝きだす 輝きだす

荒井由実が独身時代最後のアルバムとして発表した「14番目の月」。そのラストに収録されたこの曲のタイトルが「晩夏(ひとりの季節)」。1976年にNHKで放映された「夏の故郷」という連続ドラマの主題曲として流れたのが、当時から荒井由実ファンの私の耳にしっかり残った。若き日の竹下景子が主演した岩手を舞台にした山田太一のドラマ。「晩夏」の曲だけでなく、このドラマを通して初々しい竹下景子のファンにもなった。
毎年毎年、夏が終わる頃になるとこの曲が頭の中で流れ出す。晩夏の夕暮れのワンシーン。夏から秋へと移ろう切ない季節感が、犬を連れ帰ってゆく子供の風景に見事に重なってくる。夕げの家々の明かりやたなびく煙、薄暗がりの中でざわめきを増しはじめる虫の声、遠ざかる子供の声。そんなワンカットが2番の歌詞に見事に凝縮されている。ふと、故郷の匂いさえも鼻先をくすぐるのである。
メジャーセブンスコードから始まるこの曲のコード進行もエモーショナルだ。歌うのは難しいけど、ユーミンらしいドラマティックな曲展開。私の最も好きな荒井由実の曲のひとつ。

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2 throughts on "晩夏"

  1. アルバム『14番目の月』、わたしも持っています。今は、押し入れのどこかに眠っているはず。
    この『晩夏』が主題曲になったドラマは『夏の故郷』というタイトルだったんですね。竹下景子さんが出ていたということも、すっかり忘れていました。
    やっぱり、夏の終わりには、わたしもこの曲が頭の中を流れます。

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  2. オーロラさん
    懐かしい記事へのコメント、ありがとうございます。
    ユーミンの若き頃はの作品は、映像作品のようなドラマチックさにあふれてましたね。
    季節ごとに、頭の中に流れる曲がありますね。
    12月は達郎だとか、1月だったら広瀬香美?
    この季節の海岸歩き、BGMは常にトア・エ・モアです。

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