これまでの繁殖地には多くのカメラマンが集まるようになり、落ち着いてヤイロチョウの観察も難しい状況になってきた。今季は新たな繁殖地に運よくめぐり合うことができ、延べ3日間にわたり観察を続けた。針葉樹、広葉樹、照葉樹がまじりあう里からほど遠くない急傾斜地という生息環境は、既知の繁殖地と共通している。
地面でミミズを掘り出す場面、枝をくわえる場面、一定のソングポストで囀る場面など、ここから遠くない場所で営巣を始めようとしているか、すでに始めているのか、そんなことを予想させられた。
ヤイロチョウの小雨覆と上尾筒の鮮やかなコバルトブルーは、止まっているときにその色を大きく見せたり、小さくしたりする。観察者の私への警戒か威嚇の意味があるのかもしれないし、少し離れた場所にいるかもしれない別の個体へのシグナルかもしれない。
飛んだときには、そのコバルトブルーの鮮やかさが際立って見え、さらに初列風切の大きな白斑が突然現れ、その派手な飛翔姿には驚かされる。止まっている状態でロックオンし、そして飛び立った姿を追いかけているのでその派手な感覚を覚えるのであるが、天敵に対して、木漏れ日や葉陰のまだら模様に見事にカムフラージュしているのかもしれない。
この美しい夏鳥が但馬で繁殖域を広げ、より観察がしやすい状況になれば、多くの人の目に触れる機会も増えることだろう。かつて「幻」だったアカショウビンがすでにそんな状況になりつつあるが、ヤイロチョウに関しては今しばらく静かに見守る時間が必要である。
本記事を公開する頃には、ヤイロチョウは静かに、人知れず、子育ての最中だろう。
2024.6.3-6.6 D7500+VR300mmF4.0