宮崎学 野生動物が見つめるゴミ列島


この本が長く気になっていた。タイトルから連想されるように、野性動物とゴミ問題を扱った写文集なんだろうと思っていた。ようやく本書を手にすることになって、それが大きな誤解であったことを知った。
本書は自然界の報道写真家・宮崎学の半生を綴った自叙伝である。学業そっちのけで生きものに夢中になった少年時代、ドロップアウト、大病。苦難を乗り越えた青年がたどり着いた動物写真の道。独自のセンスと卓越した撮影技術で積み上げた作品が誕生するまでのプロセス。「死」「アニマル黙示録」までの代表作の撮影エピソード。
そんな宮崎学の生き様の中に人と自然の哲学が語られている。説教ではなく、自らの行動や作品の中に見事にそのメッセージが込められているところに、孤高の写真作家としての崇高さを感じる。
写真家宮崎学のプロフィールと代表作を知るための、本書は格好のガイダンスとなるだろう。宮崎学ファンにとっては、小さなバイブルともいえるのではないだろうか。書籍タイトルを見て本書を敬遠していた人がいるなら、ぜひ手にとってみてほしい1冊である。挿入写真がモノクロなのが残念であるが、本書で心を動かされた後は、ぜひ写真集で感動を増幅してもらいたい。

0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です