21年目の孤高 フクロウ 宮崎学


宮崎学の代表作の一つ「フクロウ」がハンディ版となって復刊された。平凡社から出た初版は1989年10月10日発行。このたびのメディアファクトリー刊は2010年10月10日の初版。ちょうど21年目の復活となった。
私が「フクロウ」を買ったのは2007年3月のこと。ぶらりと立ち寄った京都の本屋で見つけた、2001年3月1日発行の第8刷。大版写真集にしては異例の増刷は、最終的に10刷累計2万部を売ったとのこと。
21年の時を経て、写真界をめぐる技術革新は目覚しいものがある。しかし、その技術の助けを借りてですら、宮崎学の「フクロウ」を越えることはおろか、このクオリティに迫ろうとする作品に今なおお目にかかれない。

コレを越える作品は俺が生きている間には出てこないと、宮崎学は言い切る。それほどに、作品に賭けた宮崎学のプロフェッショナル魂は研ぎ澄まされている。ページをめくる度に、張り詰めた緊張感が伝わってくる。
ハンディ版「フクロウ」は紙質も印刷もよい。ハードカバーの大型本は永久保存版として大事にしたいし、ハンディ版は折に触れて気軽に開いてフクロウ谷の空気を感じるのに都合がよい。このたびの復刊で、より多くの人がフクロウに魅了され、宮崎学の仕事がリスペクトされることを願ってやまない。
本書の発刊にあたり、著者のBlog「gakuの今日のヒトコマ」の記事を読むとよい。21年目のフクロウは、「日本人の自然観があまりにも希薄になってきてしまっている」という氏のメッセージとして語られる。同じメッセージはハンディ版のあとがきにも記されている。「フクロウ」の復刊を喜ぶとともに、ぜひ、手元に置いておくことをお薦めする。

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2 throughts on "21年目の孤高 フクロウ 宮崎学"

  1. 講演会で接する宮崎さんは、孤高というには、あまりに気さくな方ですが、作品は、孤高そのものですね。
    あのクオリティーを目指す人すら居ないというのは、日本写真界の低迷を物語るようで、寂しいことです。

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  2. 作品とお人柄の落差というのも、gakuさんの大きな魅力ですね。「フクロウ」はあまりに完成度の高い作品で、これから先も孤高である続けることでしょう。
    今も、我が家の裏でフクロウがギャーギャーと鳴いているところですよ。

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