アニマル黙示録


人には、どうしても手に入れたいと思う本がある。私にとってそれは「アニマル黙示録」だった。写真家・宮崎学の1995年の写真集だ。写真週刊誌フライデーの連載を1冊にまとめたこの本は、第26回講談社出版文化賞に輝く。
絶版になって久しい「アニマル黙示録」は、今となっては中古市場を探すしかない。アマゾンのユーズドコーナに時々出てくるものは1万円近い値が付いていたりで、ちょっと手が届きそうもなかった。でも、どんなに高くても、いつかは手に入れようと思っていたところ、最近になって値を下げて数も多く出回るようになった。この不景気で、蔵書を処分しだした人が増えたのだろうか。
定価より千円ほど高い中古だったが、届いた本は新品同様の上物だった。「フクロウ」とともに、私の宝物の一つになった。

20世紀末日本を生きる、動物たちの生々しい姿がそこには写っている。1994年発刊の「死」(第45回日本写真協会年度賞)に次ぐ問題作は、動物の目線から人間界を逆照射するという手法が貫かれている。

「写真は視覚言語である」という氏のメッセージは、この作品あたりからより強いものとなってゆく。「アニマル黙示録」に収められた写真のいくつかは、リバイバルで最近の著書にも顔を出す。しかし、改めて「アニマル黙示録」を最初から最後まで目を通してみると、一つ一つの写真が相互に呼応し、総体としてのコンセプト性を強烈に放っている。そのパワーには今更ながら驚かされる。

「人間の出すゴミと野生動物たち。その撮影行はやがて、人間の社会と野生動物の狭間を見つめる旅となっていった。この関係を追い続けるうちに、ぼくらの社会の実像が見えてきたのだ。アニマル黙示録。この写真集はその最初の報告である。」
(「アニマル黙示録」巻頭より)

gakuさんは、そろそろ次の報告のための準備を始めているのかも知れない。その報告を待ちながら、私たち自身、自分が生きた時代の証しとして、言葉を持った写真を残してゆかねばと思うのである。
FRIDAY DELUX
アニマル黙示録
宮崎学写真集
1995年10月3日第1刷発行/講談社/定価2,500円

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