クマのすむ山 宮崎学


衝撃の写真集が出た。カバー写真を見て驚かない人はいないだろう。いや、逆かもしれない。スタッフが着ぐるみ被って演技しているのでは。そう思う人がいてもおかしくない。あまりにも「やらせ」っぽい写真は、まぎれもなくgakuさんが仕掛けた「やらせ」なのだ。しかも、演技したのが野生のツキノワグマだから、そんじょそこらのやらせ作品とは天地の差がある。
ページをめくってゆくほどに、ツキノワグマのあまりに大胆な行動に戦慄を覚える。すべて自動カメラが捉えた写真である。このことに対しいまだに批判的な意見があるが、gakuさんの撮影は、実は自動カメラをセットした時点で終わっているのである。動物の足跡、糞、毛、食痕、森の中のあらゆる情報をかき集め、整理し、分析し、慎重にステージセッティングをする。gakuさんが「絵コンテ」と呼ぶ演出どおりに、あとは動物が行動するのを自動カメラが待つだけなのだ。今回の対象はツキノワグマだが、まさに「読み」どおりに彼らが振る舞い、その様子がきっちり撮影されている事実に新たな衝撃と、痛快感すら受けるのである。
ツキノワグマをめぐっては、いろいろと論議がわいている。gakuさんのフィールド長野県伊那谷の事情が、すべての地域にあてはまるわけではない。しかし、マスコミや口づてで広がる風評や保護論を鵜呑みにすることの危険性を、この本は厳しく問いかけている。物言わぬ自然界、その報道写真家としての、これは大きな挑発作品であるといえよう。
自然からのサインをいかに読み解くか、そのことが私たち人間の生き方に繋がる。そのヒントを宮崎学は写真を通して私たちに啓発し続けている。
※ツキノワグマをめぐる宮崎学のWEBレポート、ツキノワグマ事件簿も併せて見てほしい

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3 throughts on "クマのすむ山 宮崎学"

  1. 5月17日(土)ナンバパークスのカタログハウスにて開催された宮崎学さん講演会「動物の目からみた環境問題」を聴講してきました。帰りに「クマのすむ山」を買い、宮崎さんにサインをしていただきました。
    たじまもりさんのおかげで宮崎さんのことを知り、良い勉強が出来ました。ありがとうございました。

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  2. みずほ さん、宮崎さんとの出会いはきっと大きな糧になるでしょう。
    宮崎さんのお話は分かりやすくって、少しもエラぶらなくって、最初から最後まで聴衆を惹きつけっぱなし。おエラいの話は大抵が借り物ネタなので、すぐにメッキがはげてしまいます。
    宮崎さんのお話が面白いのは、ぜんぶが自身の五感で稼いだ自身のコンテンツだからです。自然環境に対する見方が確実に変わります。
    宮崎さんはいつも言います。「俺はヒントを与えるだけだからね。後はそれぞれの人がそれぞれの土地に拘ってやって行ってください」
    そんな啓発があって、私もTAJIMANIA Sanctuaryを続けられています。

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