2つの「乾杯」

長渕剛の「乾杯」は、若き頃には結婚披露宴に招待されるたびに歌ってきた。ギターの弾き語りでやるので、行きはまだしも、会場からの帰りの荷物は引き出物が加わって、いつも大儀なことになるのだった。新郎新婦はもとより、会場の皆さんもちょっと喜んで聴いてくれるのが嬉しかった。歳をとるごとに挨拶をする側になったりで、結婚披露宴で「乾杯」は遠ざかった感があった。

2月26日、長男が出雲大社で結婚式を挙げた。粉雪の舞う寒い朝だったが、ピンと張り詰めた空気感が場にふさわしく感じた。

私は無宗教であるが、アニミズムとか、日本古来の神々の存在感は心で感じられるように思う。ご神体が何であれ、厳粛な場で手を合わせ心で祈る行為は大事にしたいと思っている。

慎ましやかな祝宴は、若夫婦の手作り演出で行われた。心のこもった、よい祝宴だった。息子から「乾杯を歌ってよ」と頼まれた。久しぶりに、結婚披露宴で「乾杯」を歌った。結婚する我が息子と新婦のために。

5月3日、娘が京都の式場で結婚式を挙げた。ガラス張りの室内を新緑が囲む、すばらしいチャペルだった。生まれて初めて、バージンロードを娘と歩いた。神父の導きで祈り、賛美歌を歌った。

80人ほどの披露宴はこれ見よがしのお涙頂戴シーンもなく、最初から最後まで、我が娘らしいスマートな式を演出してくれた。ケーキカットもシンプル。キャンドルサービスの代わりに、新郎新婦がテーブルをまわってみんなと記念撮影。

娘から「お父さん同士で乾杯を歌ってよ」と頼まれた。嫁ぎ先のお父さんは同じフォーク世代。いつか一緒にセッションしましょうと秋の結納の席で意気投合した。それが、こんな形で実現するとは思いも寄らなかった。オリジナルキーは老いた喉に少し堪えたが、ぶっつけ本番で親父デュオの「乾杯」を歌った。嫁ぎ行く我が娘と新郎のために。

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3 throughts on "2つの「乾杯」"

  1. おめでとうございます。
    どちらも素晴らしいお式だったようですね。
    親として、誇らしい気持ちが滲み出ていて、読んだこちらも幸せな気分です。息子さん、娘さんご夫婦の末永いお幸せを祈ります。

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  2. オーロラさん、ありがとうございます。
    それぞれの子の「らしさ」がこもった、どちらもとてもいい結婚式でした。和と洋と、それぞれのよさがあります。親としては、その両方をいっぺんに味わうことができてよかったかなと感じています。
    肩の荷が2ついっぺんに下りましたが、寂しさもWで感じられたりです。近いうちにおのぼりさんすることになるかも。その折には団地にもぜひ足を延ばしたいです。

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