羆撃ち


この夏は酷い暑さで、夜になっても熱気が冷めない。寝る前の読書どころではないのだが、読んでおきたい本があった。妻に頼んで図書館から借りてきてもらったのが「羆撃ち」。昨年出版された、久保俊治という一人の孤高のハンターが書いた本だ。
暑くなるまでに、二人の女流作家の本を続けて読んだ。ストーリーはそれなりに面白かったが、どうも文章がスカっとしないのだ。作者の作文力もあるのだろうけど、女性の視点からの書き様というのが所以なのだろうか。
ガツンとくる、ハードボイルドな作品が読みたかった。「羆撃ち」はハンターとしての自叙伝であり、猟犬フチへのレクイエムでもある。山を歩き、沢を渡り、獲物を追いながら夜はテントやビバーグで過ごす。森の匂い、焚き火の匂い、撃った獣の匂い、嗅覚に直接語りかけてくる本だった。
自分はハンターには成り得ないけど、この本を読むことで、作者と一緒に森を駆け巡り、ライフルを構え、羆の腹を割くことができる。いい本を読んだ。作者の文章力も秀逸である。

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4 throughts on "羆撃ち"

  1. 研ぎ澄まされた五感から紡ぎだされる森の描写がリアルです。某SNSでは1年前に話題になった本ですが、遅ればせながら読みました。
    道東の森での狩猟シーンがあまりに鮮烈なので、アメリカでのエピソ\ードに少し違和感を感じましたし、ラストは情緒的に過ぎたでしょうか。
    本に残せる人生、羨望の気持ちが残りました。

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  2. アメリカでのエピソ\ードは、大藪晴彦の「野獣を撃つ」の描写と、見事に一致しました。
    (大藪晴彦、スポーツハンターとしては、恐らく、日本一と思います。彼の、知られざる一面。)

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