星のクライマー

音楽はメロディで聴く。だから、改めてその曲の歌詞を味わったとき、別の感動が押し寄せるときがある。
松任谷由実の「星のクライマー」はそんな一曲だ。2003年リリースの”Yuming Compositions:FACES”に収められた、麗美の歌った楽曲のカバーである。麗美のメロディはエモーショナルに心へ響く。
今頃になって、Yumingが書いたこの詩は、厳冬期のマッキンリーで消息を絶った植村直己にインスパイアされたものだと知った。それからというもの、「星のクライマー」の一曲は私にとって特別な存在に変わったのだ。
  ひきずる足跡を おり風が消してゆくよ
  鳴り叫ぶテントで 恋しいひとを想う
  夜明けの月と 昇る太陽 両手に抱く場所 夢見て眠る
  あなたは星のクライマー ザイルを空にかけたの
一曲の短い詩の中に、植村直己のラストシーンがドラマチックに浮かび上がってくる。
思わず、近所の植村直己冒険館に車を走らせた。改めて建物の壁面に写しこまれた植村の写真や言葉を読む。
郷土が生んだ世界の冒険家の足跡は、「星のクライマー」と出会ったことで、私の中に思いのほか深く刻みなおされることになった。
歌の力は、強い。




写真:植村直己冒険館 2010/3/14 D90+SIGMA10mmFE

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