宮崎学の1994年の作品「死」は、発刊後15年経った今でも、根強く潜在ニーズを持つ衝撃の写真集である。初版の発行部数がはけると、多くの作品は増刷を待たずに書店から消えてしまう運命にあるのが写真集だ。「死」を買い損ねた私は、プレミア価格の付いた中古市場を物色しながら、いつかは手元に置きたいと願ってきた。
その「死」が、このたび復刊されたのである。復刊をプロモートしてくれた復刊ドットコムと、2009年11月1日初版第2刷を出してくれた平凡社に感謝したい。
誕生と同じ数だけの死がありながら、自然界の死は誕生に比べてまったくといっていいほど、人々の目に触れないままに消え去ってゆく。生のドラマは語られても、死のドラマを語られることはない。野生の死は、次の生のための壮絶なドラマであることを、この写真集は正しく教えてくれる。
「死は生への出発点である」 宮崎学は巻頭にこう記している。
自然界に無駄な死など一つもない。生から死へ、死から生へ、すべての形あるものが絶妙につながりあって自然界を創り上げているのだ。人々が目をそむけ、あえて知ろうとしなかった死から生へのバトンタッチのプロセスを、宮崎学のカメラワークが見事に表現した。
この作品は、いかなる哲学書を読むよりはるかに多くの示唆を、私たち人間に突きつけてくる。
死
宮崎学写真集
平凡社
1994年11月20日初版第1刷/2009年11月1日初版第2刷
定価4,200円(税別)
2009/11/12 GX100
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宮崎学 「死」 復刊
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