予約していた”Deluxe DVD Version”のボックス・セットが、発売日きっかりに配達された。20年ぶりのニュー・アルバムという触れ込みの、ピンク・フロイドの、おそらく最後のアルバムのリリースである。
オリジナル・タイトル”The Endress River”は、邦題で”永遠”と書いてTOWAと読ませる。ちょっとクサイけど、ま、ラストに相応しいタイトルにしたかった気持ちはわかる。
このアルバムは2008年9月に亡くなったキーボーディストのリック・ライトへのトリビュートであり、レクイエムである。 ロジャー・ウォーターズのメッセージカラーの強いアルバムに4人フロイドが傾倒してゆき、結局、ロジャーが抜けて3人が残った。その3人フロイドの、オリジナルアルバム「対」(The Division Bell)レコーディング時のセッションの断片をコラージュしたのが、今回のラストアルバムとなった。
「狂気」、「炎」、「アニマルズ」といった路線を期待して買った人には、おそらくガッカリなアルバムだったに違いない。18曲のクレジットのうち、ボーカルトラックは最後の”Louder Than Words”のみで、あとは延々とセッション・ギグの切り貼りであるからだ。
2枚組のアナログ・レコード版に合わせて、SIDE1からSIDE4までの、4楽章からなるコンセプト・アルバムと考えてよい。曲の流れは、ラピッドあり、フラットありの、まさに川に流れである。しかもフロイドお得意の、エンディングからイントロにフィードバックするという手法がとられる。すなわち、永遠のループ、Endress Riverなのである。
今回買ったDVD付ボックスは、高音質の音源が入っているという特典のみならず、在りし日のリックのセッションがムービーで見られる。その映像を見ながら、つくづくフロイド・ミュージックのコアは、リックなんだなと思わずにいられない。言葉を越えたメッセージ、ラスト・チューンの”Louder Than Words”で歌われることこそ、リックのいたフロイドそのものであり、彼を失った今、もはやフロイドは存在し得ないのだ。
私達がリアルタイムでフロイドを追いかけ、そして彼らと一緒に年をとった。もう二度とリックのいたフロイドは聴けないのだろう。しかし、彼らが残した遺産は、まさにEndress Riverとなって永遠に流れ続けてゆくだろう。RIP to Richard Wright
永遠(TOWA) The Endress River by Pink Floyd
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