朝、山に入る前に御告げがあった。早い梅雨明け以来ほとんど雨らしい雨が降らず、どこもかしこもカラカラ状態である。こんな状況で菌類の発生は望めない。しかし、「いますぐ来てください」の衣笠姫の声が聞こえたようで、いつもの竹やぶに立ち寄ってみた。
私:「どこにいるのですか?」
姫:「わたしはここにいます」
これからレースのドレスを纏おうとしている衣笠姫を、すぐ見つけることができた。





レースのドレスは伸び始めると、目視で見ているうちに、どんどんと下方に展開して行く。あっというまに、美しいドレス姿の衣笠姫がそこに立っているのだった。
最初の写真は、撮影準備をせず竹やぶに入ったときiPhoneで撮ったもの。車まで撮影道具を撮りに戻るまでの10分足らずの間に、ドレスは最下位置まで展開していた。





その隣で、次の衣笠姫がドレスを伸ばそうとしていた。このお姫様のドレスは、途中で引っかかったような膨らみを見せながら、展開して行った。ドレスがすべて展開し終わる前に、グレバから漂う臭いに惹かれて、ベッコウヒラタシデムシがどこからともなく現れ、ドレスの中にどんどん忍び込んで行った。






この日、3番目の衣笠姫は一番大柄だった。軸が少し斜めに立ち上がった影響もあるのか、ドレスも少し斜めに展開して行った。大きいので、写真写りは一番だ。竹やぶに差し込む朝日と、撮影用のLEDライトを照射しながら、撮影を楽しんだ。

ドレスを展開し終わった3本のキヌガサタケの位置関係をスマホで撮影。周りを少し整理した以外に、キノコに触ることはしなかった。雨の恵みをこれ以上待っていられないとばかり、一気に3本が立ち上がったこの日は7月7日。美しいキヌガサタケの姿を、今年も見ることができた七夕の朝だった。
2025.7.7 D7500+90mmMACRO, 10mmFE, iPhone SE