秘境と清流の四国路【四万十川編】


4日目の最終日も快晴。太平洋から「だるま朝日」が昇るポイントだと教えられ、日の出前にみんなで浜に出た。残念ながら、水平線の上に雲の層があって、昇ったばかりの太陽はしばらく雲に覆われてしまった。写真は雲から顔を出した朝日。だるまは見えなかったけど、海から朝日が昇る場所に住んでいないから、いいものを見せてもらった。湾を挟んだ対岸に、室戸岬の灯台の明かりが明滅していた。

部屋に戻って簡単に朝食を済ませ、最後のロングドライブに備える。オーシャンビューの二間続きの部屋は広く使えて良かったが、設備の老朽化が目立った。7時半過ぎには宿を出発。

四万十川の河口を右に見つつ、R321を四万十市街に向かう。開店したばかりの市内の物産館でお土産を買い求め、四万十川を左岸沿いに遡るルートをとる。

四万十川は、かつてのNHK特集で「日本最後の清流」と紹介されて以来、そのキャッチフレーズが定着した。水質は隣の仁淀川の方が綺麗なようだし、最後の清流と呼ぶには少し大上段に構えすぎな感はある。しかし、流域にダムがない、人工護岸がない、山と山に挟まれて蛇行しながら流れる、川漁が盛んである、流域の人々の暮らしは静かで慎ましやかである、そんな昔の清流の原風景をいまなお保ち続けているという点で、四万十川は、やはり実に美しい川であることを、今回初めて訪ねてみて実感できるのである。
最初に訪ねた佐田沈下橋は流域で一番長い沈下橋であり、市内から近いことから観光客が多く訪れるスポット。青い橋脚が印象的で、屋形船も係留してあった。

高瀬沈下橋は3番めに長い沈下橋だそうで、観光客もいなかったので、対岸まで車で往復してきた。

勝間沈下橋は橋脚が3本セットになっているのが珍しい。最近では、映画「釣りバカ日誌14」のロケ現場として有名になったらしい。

最後に訪ねた岩間沈下橋は、四万十川を象徴する風景の中にある。四万十川を紹介する写真やポスターは、たいがいここからの撮影なのだという。大きくS字に蛇行する流れの中に、沈下橋がよいアクセントを添えて佇んでいる。

岩間沈下橋を車で対岸に渡り、河原に下りて遊ぶ。水は澄んで美しく、丸石河原はゴミもなくとても美しい。川の表情を見るだけで、四万十川流域に暮らす人々がいかにこの川を大切に思っているかが分かる。お土産に、河原の石をいくつか拾った。
四万十川を離れて地道を長く走り、やがて高速松山道に入る。伊予灘サービスエリアで昼食。ご当地メニュー松山鮓セットは、ちらし寿司とうどんのセットだったが、とても美味しかった。松山鮓は、正岡子規や夏目漱石が好んで食べたということだ。

松山道を離れ、しまなみ海道を渡って尾道へ。しまなみ海道は初めて通るルートである。島から島へと、いくつかの橋を渡りながら瀬戸内海を横断する。瀬戸田PAの休憩で、朝からずっと運転してくれたT君と交代。山陽道を岡山空港まで送り届け、娘夫婦と別れた。
結婚30周年の3泊4日の四国旅行は、娘夫婦の見事なプロデュースによって無事終えることができた。初日に少し降られただけで、あとはずっと快晴に恵まれた。秘境祖谷の山里と古民家ステイ、清流仁淀川と四万十川。ここのところの、友達夫婦との「だらだら旅行」が身についた我が夫婦には、若者の旅計画は少々強行軍ではあったけれど、記念旅行にたくさんの場所に連れて行ってやろうという心遣いが嬉しい旅であった。
祖谷の「浮生」ステイはぜひもう一度、今度はたっぷりの時間をかけて過ごしてみたいと思ったし、これまで、メディアを通してしか知らなかった仁淀川や四万十川を初めて訪ね、次回はぜひカヌーで漕ぎ下ってみたいと思った。次の旅へ思いを繋ぐことのできる、素晴らしい今回の旅をプレゼントしてくれた娘夫婦に心から感謝する。すべての宿で準備してくれた手料理の美味しさを忘れない。四国での運転のほとんどを、T君任せで楽をさせてもらったことも感謝する。
心から、ありがとう。またきっと、一緒に旅に出よう。

(完)

2013/10/13 D7000+SIGMA10-20mm,VR18-200mm

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