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立夏の頃


ジャコウアゲハ (アゲハチョウ科)
2日前の5月6日は立夏だった。豪雪だった山はようやく春が訪れたばかりだ
が、暦の上ではもう夏。青葉の季節である。河原でアオジオオヨシキリを見
たくらい。河畔林のサギのコロニーはカワウに侵略されつつある。糞害による
ケヤキ枯れが心配される。田んぼは田植えの準備で人と農機が動いている。

鳥は諦めて、この日は5月のフィールドをゆっくり見て回ることにした。まず
は円山川の河原へ。アプローチの路傍にツルニチニチソウオドリコソウ。
河畔林のケヤキに混じってゴマギの花が目を引く。林縁に見つけたカキドオシ
を大きくしたような青い花は、シソ科のラショウモンカズラスノードロップムラサキケマンなどを見ながら丸石河原へ出る。この時期の
河原で一番目を引くのがナガミヒナゲシ。同じく帰化種のマツバウンランも出
始めている。野菜を思わせる大型の植物はゴマノハグサ科ビロードモウズイカ。
地中海原産で、いかにも洋物な雰囲気を持つ。漢字で「天鵞絨毛蕊花」と書く。

盛んに求愛飛翔を繰返すのはツマキチョウだ。意識していないせいか、普段見
かけないチョウだ。前翅先端が黄色い左が♂、右が♀裏から見ると、後翅の
網目模様が特徴的である。戻りがけに林縁で見かけたベニカミキリ。セリ科の
シャクの白い花が盛りで、ヒメウラナミジャノメやジャコウアゲハ(トップ写
真)が吸蜜に訪れていた。

午後からは妻を誘って山に上がる。この日も黄砂で霞んでいたが、お気に入り
のビューポイントでゆっくりティータイム。谷はまだ雪が多く残り*、林道上部
は残雪で通行不能*だった。3年前にアカゲラの子育てを観察したブナの木は、
大雪のせいでちょうど巣穴の位置でボッキリ折れてしまっていた。キツツキが
穴を掘り、大雪が降れば弱くなった部分から木が折れ、こうして森が更新して
ゆくんだなと思いを巡らせる。オオカメノキにレンズを向けていたら、ギフチョ
ウが高速で横切って行った。シジュウカラを逆光で。

一旦下山してから別の山へ。仲間が水場で鳥待ちをしていた。沢沿いでフキを
摘み、ワラビも少々。ギフチョウがスミレに止まった。別カット。もうかなり
翅が傷んでいた。

山中の思わぬ場所でお友達のBさんと遭遇。お誘いを受け、帰りにBさんの別
邸にお邪魔させてもらった。大雪で庭のカエデ*が沢山折れたそうだが、カエデ
のトンネルを巡る回廊は手入れが行き届いて美しい。ケマンソウ(鯛釣草)*が
可愛い。ロビー*でお茶を頂きながらしばし歓談。手回し蓄音機*を鳴らしてく
れた。SPレコードから流れるスクラッチでファジーな音色は、この古民家に
こそ似つかわしいものだった。今度また呑もうねと、約束して別れた。

【撮影データ】 08/May/11 豊岡市 D90+VR300F2.8,*SIGMA10mmFE