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シマネ・ショウ3 (Part2)


マナヅル (ツル目ツル科)
夜明け前の斐伊川河口、中洲で休むコハクチョウの群れの中に、5羽のツルらし
き影を認める。少し経ってから確認のために再チェックしようとしたら、すでに
飛び立った後だった。

早朝から、ねぐらのコハクチョウと集団飛来のマガンの観察を続けて、そろそろ
見飽きてきた頃。ツルを探しに、右岸の田んぼに降りて農道を巡回し始めた。お
目当てのマナヅル4羽とナベヅル幼鳥1羽の群れは、あっけなく見つかった。他
の観察者も付いていなかったので、遠慮なしにポジションを確保してレンズを向
ける。

マナヅルは初めて見る鳥である。灰色と白のツートンボディに、顔面の赤がとり
わけ美しく目に付く。コウノトリよりひと回り大きな鳥に見える。同じ畦に固執
しながら草を食べ続け、ときどき餌を巡って小競り合いを見せる。やがて気づい
た他の観察車が次々にやってきてレンズを向けるも、警戒心の薄いツルたちは驚
く様子もなく行動を続けた。

マナヅル4羽と行動を共にしているナベヅル幼鳥であるが、首の付根の白斑は記
憶に新しい。12月8日の京丹後市での観察個体に違いない。その後の行方が気が
かりだったが、こうして仲間と巡り会ったところで再会でき、嬉しかった。

やがてツルたちは田んぼに入り、しばらく採餌を続けた。近くの空港から飛び立
った飛行機のジェット音に反応して上空を見上げ、カラスが近くに止まって威嚇
を始めると、潮時と決めたのか、一斉に飛び立った助走のマナヅルとナベヅル。

まともにこちらに飛んできたので、ピントを追うのが大変。翼を広げたマナヅル
の翼開長は2mを超える。アップストロークダウンストローク。ちょうど2羽
が並んでアップとダウンで飛んだ。少し離れた田んぼに降りた5羽のツルを撮っ
て現場を離れた。

午後から、左岸の宍道湖グリーンパークを散策。ちょうど5羽のツルが施設の上
空を飛ぶのを見上げた。夕方近く、斐伊川中洲に降りていたツルが再び飛び立つ。
川面を飛ぶマナヅル。

この日はお昼前から風が強まり、午後からは黄砂で風景が黄ばんで見えた。その
せいもあって、出雲大社の方向に落ちてゆく夕日が、フィルターを通したように
鮮やかに染まりだした。そんな夕日をバックに、コハクチョウがねぐらに戻って
ゆく。夕日がますます赤みを帯び、この中をツルが飛べば絵になるのにと思った。
そして、その思いが奇跡的に叶ったのがトップ写真である。決して合成写真では
ない、この日のベストショットとなった。

斐伊川中洲に降り立ったマナヅルとナベヅルの5羽は、コハクチョウたちと一緒
に、またここでねぐら入りをするのだろう。羽繕いを繰り返しながら、一日の終
わりを迎えようとしていた。

鹿児島の出水平野に行かないと見れないと思っていたマナヅルに、出雲の地で出
会うことが出来たのは、シマネ・ショウ第三幕のハイライトとして、長く記憶に
刻まれることだろう。

【撮影データ】01/Feb/14 斐伊川河口 D7000+VR300F2.8,VR18-200