昨年11月の氷ノ山で気になったソウシチョウ。今回、標高1,100mの大段ヶ 平駐車場でソウシチョウの観察調査を行った。氷ノ山エリアでのソウシチョウ の存在が公となったのは2005年5月、麓の大屋市場での死骸確認や、その1年 後の2006年9月、東尾根での生態写真が神戸新聞で報道されてから。私自身、 夏鳥の繁殖期を過ぎた大段ヶ平でソウシチョウの囀りを聞くに到って、本種を 自分の目でちゃんと確かめたいと思ってきた。 10時前に現地到着したときには、子供たちの一団が気勢を上げて山頂に向か うところだった。平日というのに沢山の車が入っているのは、すべてスズノコ 採りの人たちだ。駐車場周辺の笹藪はことごとく人が入り、タケノコは採りつ くされているようだ。次々にやってくる中高年グループは、袋を担いで山道に 入ってゆく。 笹藪の縁で見つけたユキザサや、タニウツギに来たミヤマカラスアゲハにレン ズを向けながら、ソウシチョウの鳴き声をひたすら待つ。1時間半ほど経って、 ブナ林の中からソウシチョウの囀りが聞こえ出した。複数羽が鳴き交わしなが ら林床のチシマザサの中を移動している。10羽以上は居たように思った。※ソウシチョウの囀り すぐ近くで大きな声が聞こえるのに、姿はいっこうに見えない。時々笹藪が揺 れて、スズメより一回り大きな鳥のシルエットがチラっと見えてすぐに消える。 結局、藪漕ぎで入ったブナ林の中では姿を捉えることができないまま、ソウシ チョウの声もパッタリ途絶えてしまった。 再び車の中で待機していると、今度は別の場所から囀りが聞こえた。声を頼り に近づいて、タニウツギの下枝の中に一瞬出てきたソウシチョウの姿を認めた。 証拠写真にしかならないけど、前ピン顔隠れのショットをトップに掲載する。 英名の由来になっている真っ赤なくちばしがチラっと見えるカット。 鳴き声と姿が一致して、氷ノ山大段ヶ平エリアのソウシチョウの定着を確信す ることとなった。 籠抜けの特定外来種指定であるが、氷ノ山のチシマザサの中で確実に増殖を続 けており、今後但馬の他の山域へ分布を広げてゆくことは確実である。美しい 姿と鳴き声の持ち主であるがゆえに、野生化によって悪者扱いされている身上 を憂う。潜行性の強い鳥であるが、次の機会には全身を撮り収めてみたい。 横行渓谷から上がってきたが、下山は大久保のルートをとる。全線障害なく通 行可能。ハチ高原に寄り道し、別宮の大カツラで水を汲んでお土産にする。 別宮の棚田*が水を湛えて光っていた。 【撮影データ】 05/Jun/12 D90+VR300F2.8,*SIGMA17-70 |