ムシヤドリカワザンショウ
汽水域の芦原などで生活している生き物に、カワザンショウという小さな貝の グループがある。ほんの数ミリの巻貝だ。川にいる山椒の実のような生き物だか らこの名前が付いたという。汽水域の芦原が全国的に減少する中で、この貝の生 息域もどんどんなくなってきている。 50年ほど昔、寄生虫を研究している人が円山川の下流域の来日というところ で新種のカワザンショウを発見した。その名もムシヤドリカワザンショウ。城崎 町来日産の貝殻が模式標本となっている。ムシヤドリと言うのは寄生虫(肺吸虫) の中間宿主になっていると言う意味だ。 昨年の暮れに、貝分類の専門家、岡山大学の福田助教授が調査にきた。以前か らムシヤドリカワザンショウ発祥の地、円山川へ調査に来たかったそうだ。発祥 地の来日では、すでに護岸整備が進み生息できる環境には無かったのだが、這い つくばるようにして調査を進める先生と学生は、対岸の玄武洞観光センターの前 できっちりと発見してしまった。さらにこの人たちは、同じような小さな貝を、 カワザンショウ、ムシヤドリカワザンショウ、ヨシダカワザンショウの3種類に 分類した。福田先生、すでに絶滅しているのではないかと心配していたようであ るが、ムシヤドリカワザンショウもさらに珍しいヨシダカワザンショウまで見つ けてしまった。さすが円山川、ふところが深いのだ。 絶滅に瀕しているコウノトリも、小さな巻貝も、一つの種としては同じ価値が あるのだよとの福田先生の言葉に、貝に対する強い情熱を感じた。 |
本欄の写真・文は、コウノトリ市民研究所会員の稲葉一明さんからの投稿です。 稲葉さんの投稿は今回で二度目。前回の「腹いっぱいのフクロムシを」の衝撃 は、忘れられないものになりました。 その後も、稲葉さんの淡水生物に対する興味は続いており、今回は珍しい汽水 域の巻貝カワザンショウのレポートを頂きました。モクズガニのフクロムシに 次ぎ、貴重な生き物の生息が円山川で確認されるにつけ、このエリアの自然環 境の重要性を再認識せずにいられません。 なお、稲葉さんの手によるモクズガニのフクロムシページも、ぜひご覧ください。 (たじまもり記) |