週末の林道巡回が続く。繁殖を終えた夏鳥の囀りも、次第にフェードアウトし てくる時期だ。前週より鳥の声が少なく感じる。オオルリ、キビタキ、クロツ グミはまだよく聞こえる。ツツドリの声は聞こえなくなったが、カッコウ、ホ トトギス、ジュウイチの囀りは続く。 ササユリの季節である。以前は路肩に普通に咲いていたのが、爆発的に鹿が増 えて以来、食べられてしまって姿を消した。それでもどこかに残っていないか、 注意しながら林道をゆっくり流す。切り立った法面の上の方にササユリが一輪 咲いているのを見つけた。少し移動して同じような法面の上に別の2輪の開花 を確認した。(トップ写真) 鹿が歩けない崖っぷちに、かろうじてササユリ が生き残っているのだ。人も容易に近づけないので、下から望遠で狙う以外な かった。 谷沿いで一瞬耳にした声に反応し、車から出て観察モードに入る。ブナ原生林 がなだれ落ちる深い谷の奥底から聞こえてくるこの声。紛れも無くヤイロチョ ウだ。 図鑑などでは「ホホヘン・ホホヘン」と聞きなしが表現されるが、実際に耳に してみると「ホーエン・ホーエン」といった、音楽でいえばスラーな感じの連 続音である。2拍子の鳴き声が少しずつ移動しているのがわかる。 突然、アカショウビンの声が割って入った。鳴き交わしをしているので、おそ らく繁殖ペアだろうと思う。 アカショウビンのテリトリ内にヤイロチョウが近づいてきたのを、アカショウ ビンが牽制したのかなと、二つの声の重なりを聞きながら思った。録音はうま く2種のデュエットをとらえることが出来なかったが、アカショウビンとヤイ ロチョウのサラウンドとは、なんとも贅沢なひと時であった。 戻り道、特徴的に鳴く鳥の声を録音した。たぶんクロジだろうと思いながらマ イクを向けていると、目の前を黒い鳥が横切り、下から聞こえた囀りが斜面の 上に移動した。帰宅後鳴き声を同定し、クロジと確定した。 【撮影データ】 18/Jun/11 美方郡 D90+VR300F2.8 |