ミソサザイの巣立ちは思いがけずやってきた。情報を受けて営巣地に入ったと きには、巣を出たヒナは離れ離れに藪中を下流に向かって歩き回っているとこ ろだった。ヒナの1羽、尾羽は短いが親とさほど変わらない大きさだ。黄色い くちばしと頭頂に残った産毛に幼さをみる。 ヒナは3羽ではなく、5羽いた。狭い巣内では折り重なるようにして過ごして いたようだ。バラバラに歩いていたヒナたちが、やがて苔むした岩棚に集まり だした。5羽そろったミソサザイの巣立ち雛。 この場所で親鳥は給餌を始めた。巣から出て、初めての大地を歩き、何もかも が初めての世界を体験したヒナに、親鳥は改めて給餌を行い、生活順応を促し ているのだろう。給餌時間は僅かで、親鳥はすぐに次のヒナのために餌探しに 向かう。 沢を隔てたブッシュの隙間を通してのヒナ鳥観察、足場も悪くて無理な体勢を 強いられる。木漏れ日の直射日光が動いて露出が難しい。上流から親鳥がやっ てくると、ヒナ鳥が一斉にそちらを向く。端のヒナから順に餌を与える。 飛来、給餌、飛び去りのシーケンスが一巡すると、親鳥は飛来の間隔を置くよ うになった。今度は自分たちで餌を採ってみなさいと、多分そういうことなん だろう。やがてヒナたちは岩棚からゴソゴソと抜け出し、思い思いの場所へ散 ばって行った。 森の片隅で新しい命が巣立った。その生活の第一歩を目撃するまたとないチャ ンスを分けてくれた鳥仲間に感謝したい。 下界の様子を少し記録。 六方田んぼにセイタカシギの単独個体。色合いから成鳥♀と思われた。 百合地巣塔では、二次繁殖が続いている。伊豆の水田ではタカブシギ、ムナグ ロ、コアオアシシギなどの観察があった。 【撮影データ】 16/May/10 豊岡市 D90+VR300F2.8 |