まだ見ていない鳥の中で、ツバメチドリはぜひとも会いたいと思っていた鳥で ある。この時期のフィールド巡回で、念仏のように「ツバチ・ツバチ…」と頭 で念じているのだった。 夕方、その日の朝コシャクシギのいた田んぼの少し南で、見慣れぬチドリを車 窓から目撃。双眼鏡をあてると、ビンゴ! ツバメチドリだった。この鳥はチ ドリ科ではなくツバメチドリ科という独立種に分類され、その名のとおり、チ ドリとツバメのハイブリッド的なイメージを与える鳥である。 羽繕いをしてリラックスしていたが、往来の邪魔になるので車を移動させてい る間に、その場所から消えてしまっていた。 翌朝、同じエリアでツバメチドリと再会。しっかり狙うことにした。この写真 で見ると、頭部と後ろに突き出た初列風切に目が行く。そして何と言っても魅 力なのがくちばし基部の赤いワンポイント。前から見るとくちばしはツバメと 同じように広く裂けているのが分かる。喉をとりまく黒い縁取りも印象的。 後ろからはこんな感じ。伏せると土に同化してしまう。 飛びものも、不完全ながら、いくつか押さえた。翼と尾羽はこんな感じ。尾羽 は白く、先端が黒い。前飛び写真、初列風切はツバメによく似る。後飛び写真、 2列に分かれた尾羽の様子が分かる。 やがて農作業が始まる。ツバメチドリの後ろにトラクターが行く。作業の邪魔 にならぬようそろそろ撤収である。 まわりの湛水田ではムナグロ、タカブシギの姿があった。ダイサギが忍び足で 餌を狙い、別のダイサギは水路からドジョウを捕まえた。 夕刻、ツバメチドリともう一度会うことができた。このカットのあと飛んで、 上空を10分近く旋回した。その飛翔姿はツバメというよりアマツバメに近く、 また、アジサシのようでもあった。翼の下面が赤く、2列に分かれた尾羽の様 子もよく分かる。ツバメチドリはツバメ同様、空中採餌を得意とする。長い間、 高く低く飛び回っていたのは、おそらく夕方の餌採り行動だったのだろう。 ムナグロの群れが、田植えの終わった水田の上を飛んだ。やがて上空のツバメ チドリが近くの田んぼに下りたのを確認して現場を後にした。 環境省レッドリスト絶滅危惧U類の希少種、ツバメチドリの初観察であった。 【撮影データ】 04-05/May/10 豊岡盆地 D90+VR300F2.8 |