一番ノビタキを見つけようと円山川河川敷におりた。何気に堤防を見上げると コウノトリの営巣が見えた。事前情報を知らなかったので、まさかこんな場所 にと思ってしまった。足環から野上ペアのJ001♂×J326♀と判定。同地区の保 護増殖センターの谷筋で、電柱に巣を掛けては撤去され続けているペアである。 とうとう谷から出て、人家の中の電柱に巣を掛けたと見える。 堤防の上は散歩道になっていて、通り過ぎる人が真横に見えるコウノトリの巣 作りの様子を眺めてゆく。三脚を抱えた人がゆく。馴染みの顔も見える。 オスが巣に座り込んで、産座の具合を確かめている。百合地巣塔で観察経験の 豊富なKさんによればオスが産座に座れば産卵間際なのだという。 帰ってきたメスをオスが迎えた。 所用でフィールドを離れた後、午後遅くに同じ現場に出向く。すぐに離れよう と思ったが、あまりに仲睦ましいペアの仕草を長らく観察することになった。 メスはしきりにオスにくちばしを寄せる。これはサルの親愛行動で有名なグルー ミングのたぐいだろうか。メスのくちばしはオスの下半身にも及び、オスは凛 々しく立ち尽くしたたまま、されるがままの状態だった。 夕方の散歩の人が行き来する。メスのグルーミングを受けたオスは次第に情熱 が高ぶってゆき、翼で肩を抱き、体を寄せ合い、マウンティング行動に到った。 交尾には逆向きのマウンティングであるが、気持ちを抑えきれないといった様 であった。産座の具合を確かめたオスは、メスに産卵を促していたのだろう。 翌夕、観察を続けるKさんから予想通り産卵したことを知らされた。この事態 を受けて電力会社も電柱から巣を撤去しないことに決めたらしい。電柱に執着 するこのペアの執念が実った格好となったが、さて、この先無事にヒナを孵す ことができるだろうか? 【撮影データ】 28/Mar/10 豊岡市 D90+VR300F2.8 |