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コミミの不運

コミミズク
コミミズク (フクロウ目フクロウ科/Short-eared Owl)
近場のポイントでアオジを見る。ジョウビタキやカラ類の姿も見える。
山から出てきたトラツグミを期待したが出会えず。堤外のヤナギにコミミズク
を見つけた。少し飛んで笹の上に休憩場所を移した後、川を越えて対岸に姿を
消した。おそらく、昨日出会ったコミミズクだ。

午後の後半、百合地の湛水田では14羽のコハクチョウ*が集まっていた。六方
常駐の6羽グループと国府平野を餌場にしている8羽グループの合体。ときど
き餌をめぐって小競り合いをする。灰色の幼鳥*は特に分が悪い。隣の湛水田
にはタゲリが40羽ほど集まっていた。

日がすっかり傾く頃、ハイイロチュウヒ♀が飛び始める。舞い上がった瞬間。
水平飛行の横顔。ハイイロチュウヒの魅力は、なんといってもそのマスク。
さて、レポートを書くのに写真整理していて気づいた。♀と現場で同定してい
たこの個体はハイイロチュウヒ若♂だった。尾羽上面に灰色の羽根が見えるの
が証拠。猛禽の♀と若♂の識別は難しい。やはり初見♀タイプとしておくのが
無難だろう。

川面に映った赤い太陽にカモが割って入る。コミミズクの活動時間だ。ゆるや
かに翼を翻しながらヨシ原の上を飛んだ。獲物の気配を感じてブッシュに突っ
込んだ後、すぐにヒラヒラ舞い上がった。

次の瞬間だった。突如として黒い影がコミミズクと重なった。二つが重なった
まま地上に落ちた。一緒に観察していた鳥仲間の一人が、「オオタカだ!」と
叫ぶと、ようやく事態がのみこめた。オオタカがコミミズクを襲った瞬間を、
我々は目撃していたのだった。

落ちた場所まで走りながら、夢中でシャッターを切る。その間にも事態は刻々
と進んでゆく。オオタカはもがくコミミズクの動きを封じると、組み伏せに入
り急所に致命傷を与えた。そのまま捕食に入るはずが、すでにカラスに囲まれ
ていたオオタカは敢え無く追い払われてしまった。

仰向けのコミミズクは身動き一つできない。このままカラスに食われるのも忍
びなく、ベテランバーダー氏が瀕死のコミミズクを回収してきた。目に見える
外傷は見当たらなかったが、急所を見事に刺されて足にも翼にも生きる力が無
く、短い時間のうちに冷たくなって行った。

前日初めて出会ったコミミズクが、翌日こんな形で命を終えようとは思いも寄
らなかった。今回たまたま揃って観察していた4人のバーダーにとって、オオ
タカがコミミズクを狩るという衝撃的なシーンを目の当たりにしたことは、得
がたい経験となった。そして、自然界の厳しい掟というものを改めて考えさせ
られる機会になった。

【撮影データ】 02/Jan/10 豊岡市 D90+VR300F2.8,*VR18-200