観察4日目。 いつものコースを西に歩くが、さすがに今日は見つからない。流木に腰を下ろ し、穏やかな海を見ながらまったり過ごす。一人の男性が近づいてきた。釣り 人にしては道具が妙だなと思っていたが、会話してみて納得した。砂鉄を採っ ているのだそうだ。 スクラップ処理用の強力マグネットで、砂浜の砂鉄を吸いつけてはポリバケツ に貯めてゆくという。バケツに1/4ほど貯まった真っ黒な砂鉄は5Kgほど で、この段階でもズッシリきた。バケツ1杯で20Kgほどだから、運ぶのも 大変なことである。話によれば、採取した砂鉄は備前の刀鍛冶に持ち込むのだ という。丹後から山陰にかけての砂浜で、質の良い砂鉄が採れるとのこと。 男性はポケットから鍛冶の写真を何枚か見せながら、いろいろと説明してくれ た。砂浜に黒く染まった場所があるが、これは海から上がってきた砂鉄が正体 だったのだ。なかなか興味深い、砂鉄採りとの出会いであった。 東の海水浴場は人も少ないので、今日はそちらにも足を延ばしてみる。おっと、 オバシギが2羽いた。ソリハシシギ1羽もグループに加わっている。相変わら ずオバシギは警戒心がとても弱いので、ゆっくり後を追いかけて適当に写真を 撮った。 さらに東に歩いていつもの岩場のあたり。ゴミ**が半端じゃない。そんな中 にキアシシギ1羽を見つけた。ハイネズの斜面にはトウテイラン*が花盛り。 広角ズームでトウテイランを撮っていたら、眼下をホウロクシギが西に飛んで 行った。「なんだよぉ」とブツクサいいながら望遠に換えると、今度は西から 東に向かってアジサシ若鳥がヒラヒラと飛んできた。見下げの好アングルだっ たが遠すぎた。大きくトリミングのアップストローク、ダウンストローク。 こちらではアジサシの類を殆ど見ないのでラッキーだった。撮影は初めて。 車に戻りがてら、先ほどのオバシギのいた辺り。段丘の際でオバシギ2羽が虫 を漁っているところだった。ソリハシシギも同じように行動中。 あまりに無警戒なので、広角ズームに付け替えてどこまで寄れるか、チャレン ジしてみた。波打ち際のオバシギ2羽とソリハシシギ1羽*、これで距離は6〜 7mといったところ。波打ち際の黒い部分は例の砂鉄だ。 1m以内に近づくのは、さすがに容易ではない。飛ばれて*しまうが遠くまで行 くことはない。相手のリズムが読めてくると、大胆に寄ることができた。以下 の2枚はいずれも1m以内のノートリミング画像である。 ゴミの上のオバシギ*、流木の上のオバシギ* 砂まみれになりながらのオバシギとの接近戦は楽しいものだった。画一的な望 遠写真からの脱却が自分の大きなテーマでもある。しかし、普通のやり方でこ こまで寄せてきれるのはオバシギくらいなものだ。確かな方法を考えないと、 この手の写真はものにすることが出来ない。 上がり際、ヘリが近くを飛んだ。京都府警のヘリだった。前日、この沖合いで 遺体が回収されたとのニュースがあった。円山川河口で行方不明になった男性 ではないかと見られている。潮の流れから言って、箱石海岸に打ちあがったゴ ミの多くも円山川から吐き出されたものなのかも知れない。 盆休み最終日、午後が近づくほどに、空はようやく夏めこうとしていた。 【撮影データ】 16/Aug/09 箱石海岸 D90+VR300F2.8x1.4,*SIGMA17-70, **GX100+Gyoro8 |