亡き父を送り出したあと、慌しく時間が過ぎる。最期の写真をDVDに焼いて、 ホワイトレーベルには飛びっきりの笑顔で写った摩尼寺の写真を印刷した。 実家にDVDを届けようと車を出す。 なんとなく、そのまま山に上がろうと方向を変えた。林道を稜線まで上がった ところで車を停める。足元にミズイロオナガシジミ*がいた。名前は後で調べた のだが、綺麗なシジミチョウだった。トリミングしてみると、長い尾はねじれ て突き出ており、先端は刷毛のような毛が密についている。ゼフィルスの仲間 では比較的よく見られる種のようだが、但馬では少ないような気がする。 ミドリシジミ類の活動時間にはまだ早く、ルリシジミやアキアカネにレンズを 向ける。平地で馴染みの種でも、山で見ると何か新鮮だ。 来た道をゆっくり下りながら、ところどころでカシワの木に目をやる。活動時 間を見計らっているハヤシミドリシジミを葉の上に見つけた。 若き日の父も、このあたりでネットを振っていたに違いない。今は天国という 新しいフィールドで、昔のようにまたネットを振っているのかも知れない。 そんなことを思いながら山を下りた。 ダッシュボードの父の写真は、あいかわらず満面の笑顔なのであった。 R.I.P Tadasu Takahashi 【撮影データ】 30/Jun/09 美方郡 D90+VR300F2.8x1.4,*GX100 |