連れが捕捉中の電線の小型ハヤブサを一緒に観察した。コチョウゲンボウとは 思い過ごせない明らかな特異点があった。コチョウゲンボウにしては頬が白い。 アイリング、くちばし、脚が黄色ではなく橙色。 こいつはかなり珍しいタカであることが次第に認識されてきた。車に積んだ図 鑑を開く。ベテランの連れはすでに「アカアシではないか」と予言している。 「アカアシ・アカアシ…」 図鑑の「アカアシチョウゲンボウ」と見事に一致した。♀タイプだ。 アカアシチョウゲンボウ。日本では稀な迷鳥として記録されており、日本海側 の離島での観察例が時々ある程度。本州では「超」がつくほどの珍鳥のようだ。 チゴハヤブサ♀タイプの可能性もあるかなあと、現場では特に緊張感があるわ けでもなく、のんびりと相手と付き合った。今になって思い返せば、もっと真 面目に撮影しておくのだったが、時すでに遅しである。 トップ写真が観察を始めた最初のショット。300ミリのトリミングである。 600ミリに付替えた途端に飛び出して*しまった。近くを旋回したので飛び モノ狙いの絶好のチャンスだったのに、600ミリではお手上げである。 行動範囲が広く、一旦見失ってしまうともう分からない。視界から消えたので 二人で手分けして範囲を広げて捜索する。 再びさきほどのエリアに戻ってみれば、近くの電線に止まっているのが確認で きた。順光側からアプローチして、かなりの距離を置いたままデジスコ作戦に 切り替える。システムも古いままで画像もシャキっとしない上、固定もいい加 減でブレとボケの写真ばかりだった。これ**はブレているけど、一番まともな ポーズで写った唯一のカット。これ**も同じようなカットだが、アカアシチョ ウゲンボウの特徴であるくちばしと脚の橙色がはっきりと分かる。 電線から飛び出してからは飛翔行動を長く続けた。翼の裏側の模様も特徴的だ。 チョウゲンボウ類が褐色系であるのに対し、アカアシチョウゲンボウは白っぽ さが目立つ。さらに、翼の後縁に明らかな黒帯が出ている。飛翔時にチラッと 見える脚の橙色もよく目立つ。 他のチョウゲンボウ類と同じく、アカアシチョウゲンボウもホバリングを繰り 返す。餌はやはりバッタのようだった。田んぼに急降下しては舞い上がり、空 中で獲物を食べる行動も見せた。 正午前に再び視界から消え、そのまま二度と姿を見ることが出来なかった。 短い観察時間に手ごたえのある写真が残せなかったことを連れと悔やんだが、 アカアシチョウゲンボウを目の前で見たという事実は残った。 トップ写真と同じシーンのトリミングでアカアシチョウゲンボウ幼鳥の図鑑写 真を切り出しておく。雨覆羽縁と頭部に残るバフ色が幼鳥の印。幼鳥というよ り、私の感想ではメス亜成鳥ではないかと思って見ている。越冬地は南アフリ カの東海岸沿いらしい。ここから南アフリカまで、迷わず辿りつけるだろうか… 稀な迷鳥ではあるが、進行する地球温暖化の影響がこんなところにも現れ出し ているのかも知れない。ヤツガシラが毎年確認されるようになったのも近年に なってからのことだ。アカアシチョウゲンボウの出現も、そのうち稀ではなく なるのかも知れない。その頃には、ひょっとして日本は亜熱帯気候になってい るのかも。そんなことを考えてゆくと、迷鳥の出現も喜んでばかりいられない。 【撮影データ】 21/Oct/07 豊岡市 D2X+VR300F2.8,*ED600F5.6 **E5000+TSN-824M |