森に向かう峠道、路肩にテン*が転がっていた。おそらく前夜にはねられたばか りの新鮮な死体は、突然の命の終わりに無念さをあらわにしているようだった。 翌日の現場*は小雨、カラスに食われたテンの亡骸は既に元の形を無くそうとし ていた。カラスの食べ残しは、すぐにも虫たちが始末してゆくだろう。 いつもの観察ポイント、撮ったばかりのヤマセミの写真を車内でレビューして いるときだった。ガサッという音が断続的に近寄ってくる。ひょっとして… レンズを窓越しに向けた時には、黒い陰が右から左に動いて行くことろだった。 そこにいたのは、紛れも無くツキノワグマだった。体つきが小ぶりなこの熊は 生まれて1・2年の若い個体だろうと思われた。 相手はすでにこちらの存在に気付き、猛ダッシュで谷を駆け下りて行く。20 メートル先の相手をファインダーで追いながら、やっと3枚切ることが出来た。 逃げる後姿、スギの樹間から横顔。ピントも露出も合わせる間も無い撮影だっ たが、最後の一枚に一瞬こちらを向いたシーンが残っていた。(トップ写真) 一瞬の出来事だったが、ツキノワグマのしなやかな身のこなしぶりを思い出し ては、何度も頭の中でフラッシュバックさせるのであった。 あいかわらずサンコウチョウは飛び回っているが、抱卵の気配はまだ無い。 【撮影データ】 25/Jun/06 美方郡 D2X+VR300F2.8,*E5000+WC-E68 |