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川日記が2年前の5月から止まったままだ。その気になりさえすれば、そこに いつもの遊び場があるのに、問題は「その気」がだんだんパワーをなくしてき ていることだ。モチベーションの問題か。いずれにせよ、元川ガキとしての面 目は早いとこ取り戻さないといけない。 帰省中の娘からカヌーに連れて行って欲しいと頼まれていた。「んじゃあ、明 日やろうか」と、盆休みの1日を充てた。カヌーをするにはまず仲間を募って、 上流と下流にそれそれ車を配置してというような、ちょっと考えると面倒くさ い準備が必要だ。でも、私たちは、そういった準備をするところから、すでに 遊びが始まっていると思っているので、やると決まったら後はすべてが楽しい ことに変わる。 しかし今日は唐突に私と娘で決行を決めたので、やり方を考えねばならない。 すぐに浮かんだのが、江原の艇庫の裏にある通称「すのーべる淵」から出て 3キロ下流の蓼川堰堤まで下り、そこから上流に引き返すという案だ。ほとん ど流れのないエリアだから、戻りの漕ぎ上がりも苦にはならない。艇庫までの 送り迎えを妻がやってくれるので、漕ぎながらのビアも楽しめるというわけだ。 もちろん、こういう場合のフネは二人乗りのキィウイ2に限る。 11時40分、出艇の記念撮影をしてから川に滑り込む。長らく忘れていた浮 遊感が蘇る。空気は熱い。でも、川にはいつも風が吹いている。GO!だ。水 量は少なめだが、最初のザラ瀬をクリアするには問題なかった。最初に見るの はいつもこの岸壁だ。山から流れ出た神鍋溶岩の上に、さらに高くそびえるコ ンクリート要塞。この壁が洪水から町を守っている。 日置橋の下で私はスーパードライをプシュっと開け、娘は梅酒ソーダの甘いリ キュールを開けた。川の上にいると、街中のアスファルトの照り返しがいかに 気温を押し上げているかが分かる。腰の高さで水に囲まれている涼感。追い風 が連続的に、時に力強く、川の上を流れている。光るさざなみに目を細めなが ら、ゆっくりゆっくり漕ぎながらのビアが最高にうまい。 この淵ではカワセミが飛ぶよと教えた途端、目の前からコバルトブルーの小さ な煌めきが直線的に飛び去った。鶴岡橋をくぐるころには、娘のパドリングは ずいぶん上達した。この橋も近いうちに架け替えになることを教える。地味な 橋だけど、漕ぎ仲間にとっては象徴的なランドマークだ。コンクリートの低い 欄干がいい味を出している。 左岸のケヤキ林の一画に、小さな船着場がある。大きな木陰を作っていて二人 のランチタイムにはもってこいだった。ラーメンのお湯を沸かす間に、焼き鳥 をアテに2本目のスーパードライだ。娘も2本目の甘いリキュールを開けた。 ここで1時間以上の時間を過ごしたが、腕時計もしていないし、時間を気にし ようという気にさえならない。時間はレポートのために後からデジカメ写真か ら追ったに過ぎない。川には川の時間が流れている。だから、川にいるあいだ は時計を気にすることがないのだ。漕ぎたいときに漕ぎ、休みたいときに休む。 ただそれだけ。 川で食うラーメンは相変わらず美味い。今回はオニギリも1個つけた。恒例の 焚き火に焼きギスという儀式は無かったが、ま、父と娘のランチには似合わな かったかも知れない。お腹がふくれると娘が独りで漕ぐというので任せた。 鶴岡橋まで漕ぎあがって戻ってきたときの写真がトップ写真。パドルワークも すっかりサマになっているではないか。 「さて、ぼちぼち行くか」ってなことで後片付け。何も言わずに、絡んでいた テグスを集めて持ち帰るゴミ袋に入れる彼女。こういうことが自然体で出来る ようになったことは留学で学んだことの一つだろう。いいことだと感心した。 10分ほど下れば干上がった蓼川堰堤。折り返し点の記念撮影をセルフタイマー で撮ってから上流に向かった。 午後からは海風に変わって漕ぎ上がりも楽だろうと思ったが、風向きは下った ときと変わらなかった。時おり強く短く吹いたが、漕ぎに支障が出るほどでは ない。ふたたび鶴岡橋をくぐり、大きなS字の瀞場を過ぎ、日置橋を通過した。 父子連れが橋の下で釣りをしたいた。「すのーべる淵」下流のザラ瀬だけは私 がフネを降りてロープでわずかの区間を引いた。 しばらく右岸の岩の上で休んでいると、迎えの妻が河原に下りてきた。せっか くだから乗ろうよと二人が勧め、母と娘を乗せたフネがしばらく水の上を行っ たり来たりした。川の水は澄んでおり、小魚が群れ泳ぐのが見えた。 カヌーでくぐった鶴岡橋を妻の運転で渡る。楽しかったカヤッキングの話を車 内で娘が母に語っている。無防備に焼けた太ももに熱を感じながら、漕ぎ終え た後の心地よい疲労感に身を任せると、川はゆっくりと遠ざかっていった。 ※撮影:E5000+WC-E68 【 行動日 】2007年8月12日(日) 【 河 川 】円山川 【 流 域 】兵庫県北部 【 コース 】すのーべる淵(江原)〜 蓼川堰堤(土居)往復 【漕行距離】6Km 【 天 候 】晴れ 【メンバー】たじまもり+娘 on Keowee2 【 タイム 】すのーべる淵11:40…鶴岡橋下流左岸12:30-13:40… 蓼川堰堤13:50…すのーべる淵15:00 |