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JRと遊んだ円山川/PART1 8月13日、米国のJ.R.Smithが日本人のガールフレンドMihoを伴って我が 家にやってきた。彼にとっては3年ぶりの日本。今回の来日は、彼の人生に とって重大な岐路になるはずの、29歳の彼にとっては必ずしも楽しいだけ の旅ではなかった。盆休みをJR(彼は子供の頃からみんなにそう呼ばれてい た)と一緒に過ごしたガールフレンドが帰って一週間が経った。 JRとこたじま/GENを乗せてタジプリ艇庫に約束の10時に到着。少し遅れて PATIO仲間の萬屋正右衛門さんがファルトボートをカートップして現れた。 萬屋さんとは今日が始めての出会い。JRが7年前に赴任した中学校の同僚で もある萬屋さんは、がっしりした体格の、PATIOの書込みから想像するイメー ジとは少し違った、意外に饒舌な人だった。参加予定のベガさんを待ったが 来る様子も無いので出発を決めた。JR用にサイクロン、私とこたじま/GENは キィウィ2、萬屋さんのKG−1。3艇をレガシーに積んで上小田橋に向か った。国道から見え隠れする幾つかの小さな瀬には、鮎釣りの長い竿が太陽 を反射して光って見えた。 上小田橋右岸から艇を入れる。米国ではクラス5をラフティングで下ったり、 近々ロデオボートを買うと意気込んでいるJRだったが、サイクロンのコクピッ トにいきなり足を入れようとしているのを見て、こりゃ駄目だとすぐに分か った。仕方が無いのでまず正しい乗艇方法を教え、しばらく目の前の静水で パドリング練習するよう命じた。ちなみに、彼の職業は国際弁護士。 英語ではinternational lawyer(インターナショナル ロイヤー)というが、 我が家ではinternational liar(インターナショナル ライヤー)と呼ぶこ とにしている。なかなかの国際的ウソツキなのである。(笑) 上小田橋下から出艇 伊佐橋手前のバックウォータ ザラ瀬の鮎網が上がるのを待って出艇。水量は少なく、少し底を擦りながら 通過。後は伊佐橋までの長いバックウォータをゆったりと漕ぐ。JRも次第に 漕げるようになって、サイクロンの乗り心地を楽しんでいるようだった。 両岸を高い緑の堤防に囲まれた川空間を漕ぐのは気持ちが良い。川の中央に 意外な浅瀬があり、不意をつかれた鯉が泥を巻き上げて逃げ惑う。右岸の入 り江に入ると、羽根を休めていたサギやカモが一斉に飛び立った。 さて、今回の川遊びからデジカメを舟に載せることにした。防水仕様ではな いし、専用の防水カメラケースがあるわけではない。知恵を絞っていたとこ ろ、釣り具屋で手ごろな防水ケースを見つけた。風呂での予備実験の結果、 川でも十分使えると判断して今回持ち込んだ。今日の舟はキィウィ2だった ので、水上からの撮影は何の心配もなく行なえた。ただし、濡れた手でシャッ ターを押してしまいがちで、このあたりは気になるところである。 伊佐橋下流のブロック堰堤でポーテージ。ここの堰堤は四角柱のブロックが 整然と並んだ落差の少ない堰堤で越えやすい。魚も間から自由に行き来でき る。ただし左岸寄りは1mあまりの落ち込み堰堤になっているので注意が必 要である。ブロック堰堤は鉄筋などが張り出した部分があるので、ファルト のポーテージには気を使う。後で萬屋さんがしきりに文句を言っていた。 堰堤下の3本に別れた水路の真ん中を下りる。本日初めてのちょっとした瀬。 本流は右端の水路で、200mあまり下ったところで3本が合流する。合流 地点の左クランクの瀬は増水時にはちょっと緊張する場所。本流に下りるザ ラ瀬では萬屋さんのKG−1はライニングダウン。 伊佐橋手前の入り江 伊佐橋下流のブロック堰堤 川幅が広がり、新しく出来たブロック堰堤が迫る。右端の開口部から滑り降 りる。ファルトの萬屋さんも途中で引っかかりながらも何とか通過。ランチ 休憩の場所を探しながら左岸寄りをゆっくり進んだ。突然ブッシュの向こう から「オーイ!」という親爺の声。すのーべるさんだった。彼の会社は今日 は出勤日。昼休を利用して我々の様子を見に来てくれたのだった。リラック ススタイルの我々の横でオフィスルックのすのーべるさん。額に汗が光る。 冷えたビールで乾杯モードの我々。気の毒に思って「どう、飲む?」と差し 出せば、「いや、仕事中だから....」 結局、私の飲みかけをすぐに飲み干 してしまったのだったが。(笑) JRとは久しぶりの再会になるすのーべるさんを交え、楽しいランチタイム。 川で網を入れていた親爺が上がってきて我々の横で作業を始めた。数は少な かったが小ぶりな鮎が掛かっており、手際よく外してクーラーボックスに収 め、やがて不満を漏らしながら立ち去って行った。こたじま/GENはペットボ トルで小魚を捕獲しようと虚しい試みを行なったり、PFDを付けてスロー ロープに引かれたり、熱心に川遊びを続けた。 すのーべるさん登場 鮎を外す親爺たち ランチタイムの河原を出るとすぐに小さな堰があり、偵察して通過可能な流 れに2艇を誘導した。その下に右カーブの瀬があり、鮎釣りのポイントになっ ている。河原に軽トラと竿が何本か見えたが釣り人はおらず、難なく通過す ることが出来た。ポリ2艇が先行し、振り返ると萬屋さんが瀬を歩いていた。 原野風景の中、広大な静水域を渡る。一度、この風景の中をジェットスキー が走っているのを目撃したが、その後、不届き者は現れずにほっとしている。 静水域から流れる緩やかな流れに乗って下る。前方に鮎釣りが2名。こちら の存在には気付いているはずだが、一向に瀬から糸を引こうとしない。しば らく様子を覗ううちに、JRが待ちきれずに「スミマセーン!」と大声を上げ る。渋々糸を引いたところを大急ぎで通過するが、どうしても自分達が下手 (したて)な気持ちになってしまうのが悔しかった。 瀬の終りは結構なラピッドになっていて、この日一番の楽しみを与えてくれ た。JRも声を上げてこの瀬を楽しんだ。右にカーブして正面に赤崎橋が見え、 橋脚を通して向こうに竿が林立しているのが観察された。河原の前を、また してもへいこらしながら通過しなければならないのかと、嫌な気持ちになっ て行った。赤崎橋下のブロックを乗艇のままなんとか通過し(萬屋さんはこ こでもポーテージ)、右岸河原に上陸した。 赤崎河原でのビアタイム 河原から上流の赤崎橋を見る しばらくして、白のパジェロが我々の中に突っ込んできた。「ハヤト!」 差し入れのビールを出しながら、散々我々のことを探したことを告げた。 ハヤトにとってもJRとの再会は嬉しかった。しばし思い出話を肴にビールを 飲んだ。ハヤトに続いて友人の東君も登場。一気に賑やかな河原になった。 しばらくして、近くで竿を振っていた笠を被った鮎釣り爺さんが声を掛けて きた。氷を持っているかと聞いている。てっきり釣果用の氷が無くなって、 我々に求めてきたのかと思えば、自分の車の中に氷が積んであるのでそれで ビールを冷やせば良いと言うのだった。ビールも残り少なかったのでお礼を 言っただけであったが、なかなか気の利く爺さんであった。残念なことに、 私たちが河原に居た1時間以上の間に、この爺さんの竿に鮎は一匹も掛から なかった。少し上流で友釣りをしていた親爺は、調子良く釣り上げていたの にね。でも、オトリを使わない方法で根気よく糸を流す爺さんの釣り方は、 さきほどの短い会話で感じたような優しさがあるようにも感じられた。 ハヤトを奴隷に確保す すっかり上達したJR ランチタイム以上の大休憩の後、最後の下りにかかった。ここからおよそ 20分でゴールのすのーべる淵である。キィウィ2のスターンシートをハヤ トに任せ、私はバウで殿様気分。こたじま/GENは真ん中のキッズシート。 河原の鮎釣りの放列の中、嫌みをぶつけられながらも漕ぎぬけた後は再び静 かな川風景があった。サギのコロニーだった右岸の森に鳥たちの姿は全く無 く、彼らはこの場所をついに放棄したようだった。少し残念な気持ちだった が、またサギ達が戻ってきてくれることを願いながら通り抜けた。 この頃になるとJRもすっかり上手になり、余裕のパドリングで川を楽しんで いた。左から合流する稲葉川に、春の川下りの思い出が蘇る。あの崖っぷち からは今日も川ガキたちがジャンプを繰り返しているだろうか。左岸の玄武 岩を見ながらすのーべる淵はもう目の前だった。 川ガキ発見せり と、右の水路の入口に、ここにも川ガキがいた。4・5人の中学生らしき川 ガキどもが瀬で遊んでいるのであった。円山川本流では今や殆ど見掛けなく なった川ガキが、なんと、タジプリ艇庫の裏手、我々の練習場に出現したの ことが嬉しかった。珍しそうな目で我々を見つめる彼らの横をすりぬけ、夕 暮れの近づいたすのーべる淵に滑り込んだ。 上陸前、JRがロールを試みるというのでやらせてみた。乗り方も知らなかっ た奴が上がるはずはなかった。艇は仰向けのままで、一度もロールの気配を 感じる動きもないまま、JRは水中から上がってきた。「ヤッパリ、デキナカ タヨ」 JRが一発で上がっていたら、未だに100%上げる自信の無い私はきっ と打ちのめされていただろうな。 絶好のカヌー日和に恵まれた一日。JRにとって今日の円山川はきっと良いお 土産になったことだろう。後片付けの河原を渡る川風が心地よかった。 【 行動日 】98年 8月22日(土) 【 河 川 】円山川 【 流 域 】兵庫県北部 【 コース 】上小田橋(八鹿)〜 すのーべる淵(江原) 【漕行距離】約8Km 【 天 候 】晴れ 【メンバー】J.R.Smith on Cyclone, 萬屋正右衛門 on KG-1 たじまもり&こたじま/GEN on Keowee2 【 タイム 】上小田橋11:40 → 伊佐橋堰堤12:10 → 寄宮河原12:40-13:45 赤崎橋河原14:45-15:55 → すのーべる淵16:20 【 川情報 】・鮎釣り、網、ともに多し ・伊佐橋下ブロック堰堤ポーテージ ・赤崎橋橋脚ブロックは中央寄りから(なんとか)通過可能 ・ファルトでのライニングダウン数箇所 ・5万図「出石」参照 JRと遊んだ円山川/PART2へ続く
8月13日、米国のJ.R.Smithが日本人のガールフレンドMihoを伴って我が 家にやってきた。彼にとっては3年ぶりの日本。今回の来日は、彼の人生に とって重大な岐路になるはずの、29歳の彼にとっては必ずしも楽しいだけ の旅ではなかった。盆休みをJR(彼は子供の頃からみんなにそう呼ばれてい た)と一緒に過ごしたガールフレンドが帰って一週間が経った。 JRとこたじま/GENを乗せてタジプリ艇庫に約束の10時に到着。少し遅れて PATIO仲間の萬屋正右衛門さんがファルトボートをカートップして現れた。 萬屋さんとは今日が始めての出会い。JRが7年前に赴任した中学校の同僚で もある萬屋さんは、がっしりした体格の、PATIOの書込みから想像するイメー ジとは少し違った、意外に饒舌な人だった。参加予定のベガさんを待ったが 来る様子も無いので出発を決めた。JR用にサイクロン、私とこたじま/GENは キィウィ2、萬屋さんのKG−1。3艇をレガシーに積んで上小田橋に向か った。国道から見え隠れする幾つかの小さな瀬には、鮎釣りの長い竿が太陽 を反射して光って見えた。 上小田橋右岸から艇を入れる。米国ではクラス5をラフティングで下ったり、 近々ロデオボートを買うと意気込んでいるJRだったが、サイクロンのコクピッ トにいきなり足を入れようとしているのを見て、こりゃ駄目だとすぐに分か った。仕方が無いのでまず正しい乗艇方法を教え、しばらく目の前の静水で パドリング練習するよう命じた。ちなみに、彼の職業は国際弁護士。 英語ではinternational lawyer(インターナショナル ロイヤー)というが、 我が家ではinternational liar(インターナショナル ライヤー)と呼ぶこ とにしている。なかなかの国際的ウソツキなのである。(笑)