タジプリの熱い夏/円山川
「スッポンがおりますわぁ!」 出艇地のザラ瀬を下った瀞場の入り口で、東君が叫んだ。大きな皿が浮かん でいると思いきや、にゅーと亀の頭(^^;が伸びて、スッポンと分かったとい う。すぐに水に潜ったらしく、我々は目撃できなかったし、東君が一目でス ッポンと認識して捕獲でもしていれば、その日の夜はスッポン尽くしの宴だ ったはずだ。でも、誰がその生きたスッポンをさばくかは、大きな問題とし ては残っただろうが。 大きな瀞場はゆるやかに左にカーブして伊佐橋まで続く。右岸のヤナギの木 の上では、真っ青な空を背景にダイサギが純白の羽を休めている。フネが進 むとカルガモの小さな群れが川面から飛び立つ。時折、大きな魚がジャンプ しては波紋を広げた。 左岸の堤防には、真紅のロックイットをカートップした白いレガシーがゆっ くり伴走してくる。時折車から降りては、みゅうさんは双眼鏡で川の鳥たち を観察している。早朝よりの農作業で、すっかり一日分のエネルギーを使い 果たしたらしかったみゅうさんは、川に漕ぎ出す元気が残っていなかった。 川岸にはヘラブナ釣りが竿を立てて、静かに糸を垂れていた。 橋の手前の小さな山の頂きから、見慣れない鳥が飛び立ったらしい。すのー べるさんが指差して促したが、私はとうとう発見できなかった。堤防から観 察していたみゅうさんから後で聞いたところによれば、ミサゴというワシタ カの仲間であったようだ。海岸近くで魚を捕って暮らす珍しい部類の鳥だ。 伊佐橋をくぐるとブロック堰堤。真ん中の水路には鮎釣りの長い竿が見え、 我々は左の水路に向かう。ちょっとしたラピッドが続き、流れに任せて気持 ち良く下る。親爺が一人、友釣りをしていた。挨拶をし、釣果を尋ねると浮 かぬ顔で首を横に振った。 この日の寄宮のブロック堰堤は少しオーバーフロー気味。左右二個所の水路 には水が集まって一気に流れ落ちている。白い波が立って、ちょっと緊張す る場所だ。東君はポーテージを決めた。右の水路を私が最初に入り、下です のーべるさんの降下を見守る。トーネードが大きなバウを上下させながら、 何の不安もなく下りてきた。 海からの帰り車がひっきりなしに続く堤防国道を見上げる中州で昼食にする。 トーネードを渡し舟に、みゅうさんもランチパーティに参加。「海の日」と 描かれた特別仕様スーパードライをプシュ! 漕いだ後の、太陽の下で飲む ビールは格別だ。ワインを開け、チーズとソーセージがアテのささやかな河 原のパーティは、どんな盛大なパーティよりリッチだと思う。こんな幸せな 気分をもっと多くの地元の仲間にも味わって欲しい。いつもそう思いながら、 今まで、我々以外のパドラーに出会ったことが無い円山川ではあった。 中州を出発するとすぐに短い瀬。鮎釣りが竿を上げたところを見計らって通 過する。ここからしばらくは大きな瀞場。東君の乗るフジタカヌーの赤いポ リのファンカヤックは、キールが付いていてすこぶる直進性が良い。我がサ イクロンも、すのーべるさんのトーネードも、瀞場の漕ぎは苦にならない。 時々、左右の連続スイープとリーニングの練習をしながら、のんびり行く。 瀞場の終わりで左の水路に入る。流れがあって楽賃。中州のヤナギに無数の ゴミが引っかかっている。ゴミヤナギとでも名づけたくなる。増水時には水 没する中州のヤナギの木は、人の暮らしぶりを正しく我々に伝えてくれる。 人々にとって、川って何なんだろう。そんなことも少し思ってみたり。 赤崎橋のブロック堰堤も、この日の水量では乗艇のまま通過。真ん中やや右 から抜けるのがベスト。ザラ瀬に続き、テトラ前のラピッド。ここから、元 気を回復したみゅうさんが合流。タジプリ3人衆+1の川下りとなった。前 回、ここでT&Tさんたちと練習したのと同じように、ストリームイン・ア ウトの練習を繰り返す。フェリーグライドの練習も怠らない。総じて左から のフェリーが上手く出来ないようだった。利き腕とは逆の左スイープが弱い せいだろう。メインストリームに捕まってバウが流されると、「ダメで〜す」 とかT&T弁で「語り」ながら、ストリームインに切り替え。しばらくここ で遊ぶ。 カワセミが飛んで、瀞場の下の短い瀬。前回私が轟沈した場所である。雪辱 のバウラダーでのストリームイン・アウト。かろうじてOK。バウラダーは ダラ〜っとしてクイックに決まらないなあ。ストリームインの方は、下流へ のリーンさえしっかりキープすれば食われることはなかった。ここでも、し ばらくみんなで遊ぶ。 サギのコロニー下の瀞場で、みゅうさんがスカーリングやら、ホバリング (我々はミュウイングと呼んでいる特技)を見せてくれる。私も真似してやっ てみるが、時々ブレードが上手く返せなくてバランスを崩す。すのーべるさ んが新しい技をあみ出したようだ。名づけて「スノーベリング」。う〜ん、 良い響きだ。単に、頭をスターンデッキに付けて、のけぞったままウツラウ ツラとする様子を言ったまでだが、すのーべるさんの人柄にピッタリの良い ネーミングだ。ついでに無意味に沈をすることを、今後「タジマモリング」 と呼ぶことにしようか。(^○^; すのーべる淵手前の右水路で、またひとしきり練習。ここの流れはそこそこ のパワーがあって面白い。川幅は狭いが、我々の普段の格好の練習場所となっ ている。ここでのフェリーは、ビューっと滑って面白い。繰り返すうちに、 それぞれだんだん上手に渡れるようになった。すのーべるさんが、波に酔っ たと言っている。上流に向かって艇を動かすのが苦手のようだ。みゅうさん のパドリングは、前回見たときに比べずいぶん力強いものになってきた。 東君も、ランチタイムに乗ったサイクロンがとても気に入ったらしい。 タジプリ(注)の夏は、ますますホットに加熱してゆく予感がした。 注:噂の但馬プリヨン軍団の略称 【 行動日 】97年 7月 21日(月) 【 河 川 】円山川 【 流 域 】兵庫県北部 【 コース 】八鹿町上小田〜日高町江原 【漕行距離】約8Km 【 天 候 】晴れ 【メンバー】すのーべる on Tornado、みゅう on Rockit、東 on L-1(?) たじまもり on Cyclone 【参考地図】5万図/出石 【 タイム 】八鹿(上小田橋)12:20 → 江原(すのーべる淵 )16:20 【 川情報 】★瀬には鮎釣りが居るが少数 ★伊佐橋、寄宮、赤崎橋のブロック堰堤越え ★赤崎橋下流左岸のテトラ注意 |
このコーナの写真は、前半伴走してくれたみゅうさん が撮影してくれたものを掲載させていただきました。 |