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キィウィ2 de 子供の日


 上陸ポイントの運動公園に車を回送し、ロングジョンに鮎シューズというい
 でたちでマーケットでの買い物を終え艇庫に戻った。妻たじまと男こたじま
 二人が待ちくたびれていたが、キィウィ2が2つとも無くなっているのに気
 付いた。聞けば3人で河原まで降ろしたのだという。「やるじゃないの。ヤ
 ル気満々だね、今日は」 トーネードをすのーべるさんと二人で持ちながら、
 ワイワイと河原に向かった。

 河原では一組の家族が釣りを楽しんでいて、父親がちょうど大物を釣り上げ
 たところだった。子供の日の今日、それぞれの家族が子供達との時間を過ご
 している。この春、小学校と一緒に子供を卒業したこたじま/KAOは、朝早く
 から市内の陸上競技場に出かけている。こうして一人、二人と、みんな子供
 から卒業して行くんだな。こたじま達と一緒に想い出を作れるのも、残され
 た時間は少なくなってしまった。

 私のホットレッドのキィウィ2に妻たじまとこたじま/YUU、すのーべるさん
 のオリーブグリーンのキィウィ2に私とこたじま/GEN、すのーべるさんはト
 ーネード。それぞれの艇に乗り込んで、すのーべる淵を13時ちょうどに出
 艇。ひさしぶりのキィウィ2のパドリングを、淵の周りをひと漕ぎして確か
 める。うむ、やっぱりキィウィ2な漕ぎ心地。いいよね。艇をコントロール
 するための余計な神経を使うこともなく、川を全身で感じることが出来る。
 やっぱり円山川にはキィウィ2が一番似合うのだ。

 すのーべる淵からザラ瀬を下りて右に大きくカーブ。突然白い鳥が我々を追
 い越していった。「ヤマセミ!」 最近、すのーべる淵でヤマセミの活動が
 活発であることを、すのーべるさんから聞いていた。ヤマセミに出会えると
 いいね、そんな会話で漕ぎ出した直後のことであり、筋書き通りの展開に嬉
 しくなった。前方の淵の木にヤマセミが止まっているのが見える。騒ぎ立て
 るこたじまにお喋り禁止令を発令し、大急ぎで防水バッグから双眼鏡を取り
 出そうとしているうちに、ヤマセミは下流に飛び去ってヤナギの枝の中に身
 を隠した。「OK、静かに近寄ろう」3艇がパドルの音に気を使いながら、
 ゆっくり近づいていった。しかし我々の接近を察知したヤマセミは、再び下
 流へ向かって水面ギリギリを直線的に飛び去った。こたじま/YUUにパドルを
 任せて、その飛翔を双眼鏡で追った妻たじまは「バッチリ見たわよ!」と興
 奮した。役たたずのこたじま/GENを乗せている私は、パドルから双眼鏡に持
 ち替える時間が無かった。残念。カワセミは何度も見ているが、ここでヤマ
 セミに出会えたことはラッキーだった。

 ミクリの繁殖地に様子を見に行くが、まだ水の上に茎を伸ばしていなかった。
 左岸の溶岩を見ながら、これが神鍋山から流れてきた溶岩であることを説明
 する。川幅の広がったこのエリアは海風の逆風が少し辛い。向かう右岸の淀
 みに赤いカナディアンが見えた。円山川中流域で他のカヌーに出会うことは
 珍しいことだったが、どうやらバス釣りが目的のようであり、双眼鏡で見れ
 ば3人が乗り込んでルアーを投げていた。スターンの男が煙草を吹かしてお
 り、この連中に声を掛けるのをすぐに諦めた。もっとも、私は先ほどからス
 ーパードライをカップホルダーに確保しながら、あぐら体勢でパドリングを
 続けているのであったが。(^^ゞ
 
鶴岡橋手前
 時々バウシートのこたじま/GENにパドルを任せるが、自分で漕ぐと意気込ん  だ割りにまったくデタラメな漕ぎで、しばしば後から教育的指導を施すので  あった。8才の体には、2.4mの長いパドルはまだ少々扱いが難しい。   鶴岡橋を通過し、蓼川堰堤のバックウォーターを漕ぎ切る。左岸魚道の右の  草むらに艇を着けポーテージ。水量は少なく、コンクリートのフラット堰堤  の中央には水が無い。レスキューベルトで艇を引きずってここを横断。右岸  寄りのラピッドを下る。少しばかり波立つラピッドは、キィウィ2にとって  みれば何のことはない小川みたいなもの。溶岩の間をすりぬけるときに、妻  たじま号が座礁。岩に乗り上げたまま「どうするの?!」などと抜かしてい  るが、今回2度目のパドリングとなる彼女に、「前を見て漕ぎ抜けるんでし  ょうが!」とも言えず、フネを下りて岩から引きずり降ろしてやった。こう  したサポートをするにも、オープンカヤックはすこぶる便利である。スプレ  ーも無いし、どこでもヒョイヒョイ乗り降りできる。  
蓼川堰堤ポーテージ
 右岸の河畔林が新緑で眩しく、水面に映した緑の陰を魚のジャンプが時折揺  らした。上郷橋下のブロックをうまくすり抜け、左岸のテトラに注意をしな  がらいつもの中州に近づく。南向きの砂利浜に明るい茶色の毛をした哺乳類  がいるのが見えた。タヌキだったかも知れないが、我々に気付いて草むらに  ゆっくり姿を隠した。「あの場所が好きなのは、僕たちだけじゃなかったん  だなあ」とすのーべるさん。いつもすのーべるさんが詩人になるこの小さな  島は、我々の一番のお気に入りの場所だ。  
上郷橋手前の河畔林
 薄い雲が太陽を隠していたが、「詩人の島」の上に広がる空は広く、蘇武岳  稜線が逆光のシルエットとなって横たわっていた。妻たじまが用意した広い  タッパーに入ったお握りをほお張り、氷で冷やしたビールを開ける。子供の  日の気分を醸し出すために仕入れた柏餅は、こたじま/YUUが一つ食べたっき  りで、残りを我々夫婦が平らげた。カップ麺、ウィンナー、チーズ、オレン  ジとちょっとゴージャスな(でもないか^^;)ランチタイムは、2艇のキィ  ウィ2のポーターのお陰。お構いなしにどんどん荷物をほうり込んで川を下  れるのが良い。  
詩人の島にてランチタイム
 お腹の膨れたこたじま達が泳ぐと言って川に入っていったが、さすがにまだ  冷たいらしく、すぐにその遊びを諦めて帰ってきた。「君たち。この前とー  ちゃん達が下った川にはなあ、立派な川ガキがいましたよ。これくらいで寒  いなんてのは、甘いね、まったく」 こたじま/YUUは一人で漕ぎ出し、左岸  の淀みでルアーを投げ、こたじま/GENは右岸の浅い水路に入ってカワニナや  アメンボの採集をし、それぞれの川遊びを楽しんでいた。喧騒とは無縁のゆ  ったりとした時間を過ごした後、ゴールをめざし出発した。  今度は私の艇にこたじま/YUUが乗り込んでしっかり漕いでくれたお陰で、ず  いぶん楽賃な思いをさせてもらった。もう少し仕込んでスターンシートを彼  に譲り、私はバウシートでゆっくり自然観察を楽しもうと心に決めた。河原  ではオオヨシキリとセッカが鳴き、季節は早い移り変わりで春から夏へ向か  っていることを感じた。  
こたじま/YUUにパドルを任せて
 八代水門手前のちょっとした瀬は、ネコヤナギの張り出した左岸に流れが集  中していた。ここに突っ込めば沈は間違いなし。先行して妻たじまに指示を  与える。左に流されてゆくのを見ながら、「左を入れろ!左!左!」 なん  とか切り抜けた。やがて右岸の河原に川遊びの一団を見つけた。子供が川に  向かって石を投げて遊んでいる。「あ、しんご君だ!」「ん?」 次第に河  原の一団の顔ぶれが近くなって、我が家のご近所仲間であることが分かった。  すのーべるさんの知り合いも混じっていて、川の上と河原でのしばらくの会  話。子供たちがフネにまたがってきたり、石を投つけたりしてはやし立てた。  
ご近所仲間との遭遇
 ゴール地点はそこからすぐだった。右岸に沿って小さな瀬を流れて、多自然  工法と行政が自慢する(超!)不自然工法の護岸にフネを着け、今日のショ  ートツーリングを締めくくった。こたじま達はもちろんであったが、妻たじ  まにとっても今日のツーリングは楽しかったらしく、「今度はサイクロンに  乗ろうかな」だと。我が家の洗脳活動が順調に推移していることを思い、こ  たじま連の「楽しかった!」コールの中、艇庫に向かって車を走らせた。  それにしても、キィウィ2二艇とトーネードを縦積みカートップした我がレ  ガシーは一種異様な雰囲気であったが、「う〜む、かっこいいよね」と頷き  会うシアワセな親爺パドラー二人を、妻たじまが一笑した。  
不自然工法の河原で上陸
 【 行動日 】98年 5月 5日(火)  【 河 川 】円山川  【 流 域 】兵庫県北部  【 コース 】すのーべる淵(日高町江原)〜運動公園(豊岡市土淵)  【漕行距離】約7Km  【 天 候 】薄曇り  【メンバー】すのーべるさん on Tornade, 妻たじま&こたじま on Keowee2,        たじまもり&こたじま on Keowee2  【 タイム 】すのーべる淵13:00 → 運動公園16:30  【 川情報 】・ヤマセミ確認        ・ミクリ未生、キショウブが目に付く        ・上郷橋下ブロック、右から2本目の橋脚を右から越える        ・八代水門手前の瀬、左岸のネコヤナギに捕まらないよう        ・5万図「出石」参照