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円山川/豊岡〜円山川公苑

 9時45分、公苑でTakao さんと久しぶりに対面。最後に会ってから、もう2年く
 らい経っただろうか。相変わらずのヘアスタイルに、人なつっこそうな笑顔が懐か
 しい。車も昔のままの、サニーカリフォルニア。カヌーラックには、全長5mの黄
 色のシーカヤック。ラダー付のスリムな艇は、いかにも波を切って走る速いイメー
 ジがする。私の車を残し、Takao 号で本日の出発地点である14Km上流の豊岡市の今
 森グランドに戻る。

 出発の準備をしていると、妻たじまが子供達をつれて見送りにやってきた。子供達
 が乗りたそうにしているが、今日のところは最初から遠慮してもらっている。10
 時40分、予定の出発時間を40分オーバーし、2艇が漕ぎ出す。見送る子供達に
 手を振る。父さんは頑張るからなあ。(^^)/~

 朝の晴れ間はもう無い。どんよりと雲が低くなってきた。でも当分は雨の心配はな
 さそうである。円山大橋をくぐる。ボラ釣りが橋の上から糸を垂れている。流れは
 殆どとまっている。鏡のような川面に、回りの山の影が浮かんでいる。アオサギが
 多い。群になって飛んでゆくのは、ムクドリだろう。Takao さんと久しぶりに話が
 弾む。口からこぼれるたわいもない話が、川面に落ちては消えてゆく。子供の頃遊
 んだ大磯浜には、重機が入って砂を掘り返している。何を作ろうとしているんだろ
 う。親水公園? 付近の水は腐って淀んでいる。南中学校から、運動会の音楽が聞
 こえている。「走れコータロー」だ。これが流行ったころ、中学生諸君はこの世に
 命すらなかっただろうに。

 立野大橋に続いて堀川橋を過ぎる頃、宮津線鉄橋の向こうに不穏な動きをいち早く
 Takao さんが察知。「我々の天敵がたむろしとる。」 やがてフルスロットルの不
 愉快なエンジン音を響かせて、天敵たちが動き出した。彼らの基地の前を横目で睨
 みつつ通り過ぎ、一日市(ヒトイチ)の中州を左に見て進む。近づくと、何匹かのゴイサ
 ギが飛び出してきた。この島には人の匂いがしない。中州を後に私は右寄りを進む。
 右手の野上(ノジョウ) の葦原は、8月の終わりにツバメの塒(ネグラ)入りを観察した場
 所だからだ。この葦原で仲間を作ったツバメたちも、もう南に帰ってしまった。そ
 んな、センチメンタルな気分をぶちこわすように、天敵たちがブンブン走り回る。

 やがて奈佐川が左から流入し、この下から円山川の最も美しいとされる風景となる。
 川面と殆ど同じ高さで走る県道から見る円山川の風景。対岸に葦が茂り、山際には
 玄武洞の奇勝を望む。そんな景色を映した川面を割って、屋形船が下る。そんな絵
 になる風景も、川の中から見るとまるで違ったものになる。大きな風景の広がりで
 フィルターのかけられた川の中は、実は発泡スチロールやポリ容器が葦の陰に無数
 漂っているのだ。魚釣りの糸や、ウキもたくさん絡まっている。悲しいことではあ
 るが、これがこの川の本当の姿なのである。

 漕ぎ始めて1時間半。玄武洞駅前の船着き場に到着。出るときに調達を忘れたビー
 ルをここで仕入れる。何? 350mlが300円だと。飲めないTakao さんをよ
 そ目に、一人寂しくプシュと開ける。Takao さんのチヌーク、実はキィウィ2と同
 じメーカの手によるもの。シートのドリンクホルダも勿論、両サイドにポケットま
 で付いている。背もたれにはクッションも張って有るし、ロングツーリングを考え
 た設計になっている。お値段の方も、3年ほど前で20万円ほどしたらしいけど。

 ますます垂れ下がってきた黒い雲の下、余り冷えていないビールを飲みつつ、昼食
 をとることになった「ひのそ島」に近づいてゆく。作りかけで長い間放置されたま
 まのリゾートホテルを左に見、山陰線が川に近づくと島である。中州であるこの島
 は、かつて流域住民の農耕地として長く利用されてきた。上山(ウヤマ) や結(ムスブ)に
 住む30代の職場の仲間が、ここに船で渡って田を耕していた両親の思い出を語っ
 てくれたから、この島が放置されてからそんなに時間は経過していない。人が入ら
 なくなって、この島の住人は昆虫や鳥だけになった。絶滅危惧種の動植物の生息が
 確認されているこの島も、治水のためにやがて削り取られる運命にある。

 そんなひのそ島に上陸して、この目でその自然を確かめてみたかった。知り合いの
 電話で上陸地点の情報は聞いていたものの、使われなくなって久しい船着き場跡を
 探すのは容易ではなかった。ここかな、と思った箇所はあったが特定できず、しば
 らく上陸地点を探してウロウロした。強行手段にでた私は、少しブッシュが切れた
 あたりに艇を寄せ、無理矢理上陸。すぐにイバラの応酬。痛〜い! 何せ下は海パ
 ン一丁なんだもの。葦のブッシュをしばらく漕いでゆくが、前が一向に開けそうも
 ない。下は湿っていてマムシの巣窟の気配。ヤバイなあ。で、前進を中止し、戻ろ
 うとするが、葦のジャングルの中で道を失う。どこに艇を寄せたのか皆目分からな
 い。しばらくうろついて、ようやく葦の隙間から赤い物を発見。艇に戻った時、両
 足は無数のミミズ腫れと虫刺されで酷い状態であった。

 ともかくも、ひのそ島に上陸したという事実が残ったが、夏草が枯れる頃、もう一
 度本格的に上陸してみようと思うのであった。Takao さんは結局艇に乗ったまま、
 この島を離れることになった。人が入らない土地の自然の生命力の偉大さに、我々
 は翻弄された形になったのだった。

 ひのそ島の右の水路に釣りボートの親子連れ。釣果はイマイチのようだった。結橋
 の右岸に、この日第二の天敵軍団。クレーン付大型トラックを岸まで乗り入れ、ず
 いぶん派手な連中だ。どうやらこれからエンジンを回すところのようだ。奴らの前
 を過ぎると、後ろから2艇のジェットスキーが我々をあざ笑うかのように、爆音を
 残しフルスピードで下っていった。右手の葦原にレジャーボートが繋がれた小さな
 桟橋を見つけ、ここで昼食。

 私はカヌーイストの正しい昼食である(?)チキンラーメンを。Takao さんは安売
 りのチャーシュー麺を食していたが、選択の誤りをしきりに悔やんでいた。Takao 
 さんからドリップ式のモンカフェとシュークリーム、オレンジといった豪華デザー
 トの配給を受け、ご馳走にあずかった。

 空はいよいよ怪しく、いつ降り出してもおかしくない状態であった。海風に向かっ
 て漕ぐのは疲れる。川幅はますます広がり、城崎大橋からはたくさんの釣り糸が垂
 れていた。酔狂な川遊びオッサン2人に対し、頭上から多くの目が注がれる。ここ
 は格好良くパドリングしなくっちゃ。パドルを握る手に力が入る。服装がちょっと
 地味かな、などとつまらないことを気にする。城崎駅の裏手からはますます海の気
 配。波が立って艇も揺れる。少し気分が悪くなってきたぞ。ウップ

 玄武洞付近から、ボラのジャンピングを多く目撃した。城崎まで下ると、それはま
 すます増えてきた。中には艇やパドルに頭をぶっつけるタイミングの悪い魚もいて、
 ジャンプの度に面白く観察をする。糸を垂れるより、タモ網で空中キャッチした方
 が効率的とさえ思ったほどだ。右に城崎温泉マリーナの看板。その裏手から楽々浦
 湾(ササウラワン)に漕ぎ入る。

 きったな〜い。本流に流れ込めない淀んだ水は、ドブネズミ色。ゴミがいっぱい浮
 かんでいる。1Km先の水中の鳥居をくぐってから早々に引き返す。こんなドブの
 中を2隻の屋形船が客を乗せてゆく。先のマリーナに、我が豊岡高校漕艇部の艇庫
 を見つける。ここまできて練習しているのか。マリーナから出たモータボートがゆ
 っくりそばをすり抜けてゆく。ジェットの連中とは違ってマナーが良いことに二人
 で感心する。

 右の岩場付近で2隻の釣り船。その先にたくさんのカヤックが浮かんでいる。いよ
 いよ円山川公苑だ。監視の係員に守られて、カヌーの練習に余念のない若者を見な
 がら、数年前にTakao さんとここで練習したことなどを思い出す。駐車場に近い岸
 に上陸。時計を見ればまだ14時40分であった。予定より2時間も早い。ひのそ
 島探検をパスしたり、楽々浦探検をショートカットしたりということもあったが、
 途中でロスが無い分、思いがけず早く下ることができた。 全行程16kmをちょ
 うど4時間で下った。平均速度は4Km/Hということになる。

 円山川下流域は、もう一度下ろうという気はしない。円山川を代表する風景を下っ
 たというだけで満足であった。最後まで雨には降られなかったものの、晴れた景色
 であったらもう少し違った印象だったのかもしれない。瀬があり、淵があり、河原
 のある川が川遊びには最適であることを、改めて感じたツーリングであった。ジェ
 ットスキー軍団が、我々の川遊びの邪魔であったことも確かである。円山川の下流
 は、ジェット軍団にくれてやろう。ただ、あのたおやかな風景に耳障りなエンジン
 音と派手な格好は全く似つかわしくないのであるが。

 【 行動日 】95年 9月10日(日)
 【 河 川 】円山川
 【 流 域 】兵庫県北部但馬地方
 【 コース 】豊岡市今森〜円山川公苑(河口)
 【漕行距離】約16Km
 【 天 候 】曇り
 【メンバー】たじまもり on Keowee2、Takaoさん on Chinook
 【参考地図】5万図/城崎
 【 タイム 】今森グランド 10:40 → 玄武洞駅前 12:10 → 円山川公苑 14:40
 【 川情報 】★ポーテージ、ライニングダウン無し
       ★コース全域に渡り静水(ひたすら漕いで下さい)
       ★ジェットスキー注意
       ★橋上からの釣り糸に注意
       ★景勝地玄武洞あり(飲料、食料調達可)
       ★円山川公苑では駐車無料

チヌークを漕ぐTakaoさん


キィウィ2を漕ぐたじまもり


城崎大橋手前で昼食


上陸地の円山川公苑にて