円山大橋(豊岡市)

28/Nov/1998

円山川右岸から市内に向かう円山大橋
円山川右岸から市内に向かう円山大橋

橋中央付近にて
橋中央付近にて

橋中央から円山川下流を見る
橋中央から円山川下流を見る

市内側より東を望む
市内側より東を望む

くたびれた歩道
くたびれた歩道

1998年11月28日(土)15:00、円山大橋はその70年の歴史を閉じた。

前日の出勤時、いつものように混雑する橋のたもとの交差点に、新聞記者らしい女性がカメラのファインダーを覗いていた。 毎朝同じ時間にここを渡り、同じ車と橋の上で列を作り、同じ車とすれ違った。渋滞の列から右に目をやれば、学生の自転車の群れが白い息を残して車を追い越して行く。 この見慣れた朝の風景も、この日が最後かと思うと寂しい気持ちだった。 渋滞の車の中から、最後の風景をカメラに残しておこう。そう思って、助手席のカバンからデジタルカメラを取り出した。 幾度かシャッターを押したが、バッテリー不足でとうとうシャッターがおりなかった。

翌日、ちょうどお昼のサイレンが鳴る頃に、子供と連れ立って「渡り納め」をしてきた。写真はその時のものである。 300mほど上流にかかる新円山大橋を望めば、今森側の入口に風船のゲートや白いテントが見え、開通のセレモニーを待っているようだった。 旧円山大橋では、少し前から河川敷に工事用の仮設道路が付けられ、何台もの重機が運び込まれた。新円山大橋開通と同時に旧円山大橋は閉鎖され、すぐに撤去工事が行われるようであった。

風の強い午後で、海から吹いてくる冷たい風が耳に痛かった。橋の中央まで来ると、北に向かう円山川が美しい。 先月の但馬学で学んだ円山川の改修工事のことを思い出しながら、直線化された流れと、左岸の大磯浜跡などを眺めてみた。 スズキの季節には、この場所から釣り糸を垂れる人が多く居た。昨年の柳まつりは、この橋の上から花火を見たものだ。 心を寄せた異性の友と、この橋を並んで渡った遠い日の想い出も甘酸っぱく蘇る。

様々な喜びや、悲しみ、憎しみを渡し続けたこの橋が、その使命を全うした。 ひび割れた路面や、タイルの剥がれた歩道が、通り過ぎた人々の歴史を伝えていた。