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野生のエリザ


エリザハンミョウ(ハンミョウ科)
虫屋のUさんから、円山川の再生湿地にエリザハンミョウがたくさん出ている
と情報をもらった。これまで見たことのない甲虫なので、興味津々で指示され
た河川敷に出向いた。長靴で水際を歩いてみるも、それらしきハンミョウの姿
がない。足元を小さなアブかハエのようなのがたくさん飛び回るばかりだ。

「まてよ」、と、その小さなアブかハエのような虫をじっくり観察してみれば、
それがまさしくエリザハンミョウだった。生息環境を魚眼レンズで記録する。
近づくとすぐに飛ぶので、なかなか撮影が難しい。

体長1cmほどのエリザハンミョウは、遠目には超地味であるが、近づいて見
ると淡い金属光沢に、上翅のサイケデリックな白い条紋がとても美しい。
正面顔はまさしくハンミョウの面構えだ。

あちこちで交尾行動が見られ、泥の上には幼虫が潜むおびただしい数の穴があ
り(トップ写真の下)、じっと見ていると幼虫が顔を動かし出す。それにして
も物凄い数の成虫と幼虫の数である。少し離れた場所でもエリザハンミョウは
たくさん見られた。

安部公房の小説「砂の女」に出てくる、ハンミョウを採集しに来て砂の穴に幽
閉される男の、そのハンミョウとは鳥取砂丘に生息するエリザハンミョウがモ
デルと言われている。その鳥取砂丘のエリザハンミョウは生息数が激減し心配
されている。一方で、国交省が円山川で行っている湿地再生事業により、これ
まで当地ではほとんど見ることができなかったエリザハンミョウが大発生した。
自然界は常に動いており、その過程で生まれる僅かなニッチを巧みに利用する
様々な生き物がいる。自然界は不思議で実に面白い。

【撮影データ】02/Sep/18 D500+90mmMACRO,35mm+Gyoro8