私の記録では2009年の観察を最後に、以降、この湿地で見ることができなく なったサギソウ。昨年、仲間が1株の開花を確認したとのことだったが、長い間、 この花と会えないまま過ぎて行った。 豊岡市内の希少植物を絶滅の危機から守ろうと、昨年、行政が「ノアの方舟」作 戦を展開した。この湿地は、私が担当者を現地に案内して、ネットで囲む範囲を 指示した。その「ノアの方舟」の中に、今回初めて入ってみた。ネットを堺に、 植生の著しい変化が見てとれる。圧倒的なシカの食害に侵されていた湿地は、見 事に緑が回復し、膝丈の草がサワサワと生い茂っていた。 サギソウはすぐに見つかった。2株、1株と見つけてゆく。8株ほどの群落もあ り、「ノアの方舟」作戦の顕著な効果を目の当たりにした。この湿地で久しぶり にサギソウを見ることができ、その復活を同行した妻と一緒に喜んだ。 ミミカキグサもあったが、背丈の伸びた草に隠れて目立たない。モウセンゴケも ちょっと見た限りでは見えなかった。ミズギボウシがあちこちで目についた。 あとはホシクサの仲間の群落をチェック。 ネットは湿地の最奥部まできっちり張り巡らされており、こちらからお願いした 範囲をほぼ正確に囲んでくれていた。シカの食害から免れてサギソウが復活した のはよいが、伸び放題の湿地雑草による新たな植生の変化も懸念事項として出て くるだろう。「適度な撹乱」というのが、なかなか人のコントロール下では難し い。「ノアの方舟」作戦の今後の課題だろう。 サギソウは12株ほどの開花をチェックした。サギソウの後はハッチョウトンボ と遊ぶ。尾を立てて暑さを凌いでいる。図鑑写真。正面カット。 ハッチョウトンボも今期の初観察だった。 処暑を過ぎ、ねっとりした暑さから空気が乾いてきたのを感じる。妻と2人で、 6年ぶりにサギソウに出会えた喜びを感じながら湿地を後にした。 【撮影データ】23/Aug/15 D7000+VR300F2.8,SP90MACRO,SIGMA10-20,Gyoro8 |