ポイントに着いて空を見上げると、それは幻のように、尾根からゆっくり滑空し てリフトの鉄柱に止まった。3度目の観察行で、ようやっとイヌワシに出会った 瞬間だった。 鉄柱の上のイヌワシは、地味な羽根色や翼を畳んだシルエットから、遠目にはト ビに見間違う可能性が高い。しかし、トビと比べて明らかに大きな翼開長と、バ チ状に凹まない尾羽の形状を、その飛翔姿で確認した直後だったから、確信を持 ってイヌワシと認識できた。 沢山のツバメが稜線上を飛び交うなか、イヌワシの顔をアップで見れば、それは 紛れも無く森の王者たるタカの気高さをたたえているのであった。 およそ1時間の間、イヌワシは草原を俯瞰しながら獲物を探している様子だった が、諦めたのか、あるいは天候の急変を察知したのか、身体に緊張感を漲らせた あと、飛び出して行った。 逆光空抜けのイヌワシ飛翔を連写した後、稜線のピーク下をゆっくり旋回してか ら北へ遠ざかって行った。イヌワシが消えて間もなく、広い範囲で土砂降りの雨 となった。 長い間、但馬で野鳥観察を続けてきて、ようやくイヌワシと巡り会えた。食物連 鎖の頂点に立つ平地の鳥がコウノトリだとすれば、山の鳥はイヌワシである。 但馬には、この2つの頂点を支える豊かな自然環境が残っている。 【撮影データ】17/Aug/15 D7000+VR300F2.8 |