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ナベコウの思い出


ナベコウ(コウノトリ目コウノトリ科)
六方田んぼのソデグロヅルは、飛来確認後の早い段階でマスコミによって情報が
リークされ、大勢のカメラマンが押し寄せる事態となった。綾部に飛来した珍鳥
ナベコウは、地元の野鳥観察グループが情報管理を徹底したため、大騒ぎになら
ずにすんだ。昨年末のことであるが、綾部の鳥仲間からその貴重な情報を得て、
ナベコウに会いに行ったときの記録である。

一度目は空振り、その二日後に再訪して、念願のナベコウに会うことができた。
黒い羽根の頭頸部のあたりは、金属光沢が出て非常に美しい。その黒い姿に、赤
いくちばしと赤い脚が印象的である。アイリングの赤が表情を凛々しくしている。

午前中から捜索を続け、諦めかけた午後、何度もチェックしていた場所にこつ然
と姿があった。豊岡のコウノトリは英語でOriental White Stork。ナベコウは、
Black Stork。明快な英名である。コウノトリ文化館にナベコウの剥製が展示し
てあるが、まさか、近くで本物に会えるとは思っても見なかった。

生活道路の電柱に止まっており、下を車が通過しても動じなかったので、私も車
を寄せてみた。結果飛び立って、すぐそばの別の電柱に止まった。逆光がキツい
が、ポジションを変えられないまま車内から観察を続ける。

ナベコウのお腹は白い。相手が落ち着いてきた様子なので、車外に出て順光に回
りこむチャンスを狙っているとき、配達のバイクがけたたましく真下を通過して
飛ばしてしまった。腹から脇、下尾筒にかけて、真っ白であることが確認できる。

飛んだナベコウは、ゆっくり羽ばたいて南へ向かう。
アップストロークダウンストローク。
黒い金属光沢を輝かせながら、やがて高度を上げ、視界から消えて行った。

ナベコウはてっきりアフリカに棲むコウノトリとばかり思っていたが、今回を機
に調べてみると、中央アジアに広く分布していることがわかった。日本への飛来
は非常に稀で、今季は長崎県の諫早干拓地で長く観察されている。朝鮮半島から
の飛来チャンスを考えると、長崎での目撃例は納得もできるが、綾部の山あいに
ナベコウというのはファンタスティックである。海から由良川を遡上して入って
きたのだろうか。今回のナベコウの確認場所、実は豊岡から遠出したコウノトリ
も飛来したことがある。何かコウノトリを呼び寄せる条件が整っているのだろう。

その後、地上のナベコウを順光で撮りたいと次のチャンスを待ったが、結局叶う
ことがなかった。豊岡のコウノトリよりひと回り小さい、黒いコウノトリとの稀
な出会い。そのチャンスを作ってくれた綾部のKさんUさんに感謝致します。

【撮影データ】 10/Dec/14 京都府綾部市 D7000+VR300F2.8