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変身


アブラゼミ (カメムシ目セミ科)
夜涼みに庭に出る。足元を照らすと黒っぽい虫が這っている。ゴキブリかと思っ
たその虫は、犬走りに出したままの散水ホースに這い上がった。アブラゼミの
幼虫だった。土から這い出て、羽化の場所を求めて徘徊中だ。

せっかくのチャンス、逃す手はない。庭のカエデの幹に移動してやって、羽化
の瞬間を狙うことにした。ゆっくり幹を這い上がって、しばらく目を離してい
るうちに視界から消えてしまった。ライトで丹念に探すと、高さ2mほどの枝
先でタナグモの網に足をとられてもがいているのを見つけた。脚立を出して救
出してやる。

上に行こう行こうとする幼虫を何度か根元にリセットしなおし、ようやく目の
高さの枝に落ち着くそぶりが見えた。最初に見つけてから1時間40分経過。
羽化までもうしばらくかかりそうな気配で、睡魔に勝てず一旦退却。

1時間ほどウツラとしてから再出動。ライトを照らせばアブラゼミの白い体が
闇夜に浮かび上がった。すでに脱皮の終盤を迎えており、頭を重力方向にして
最後の一脱ぎに掛かっていた。

目の前で殻を脱ぎ終わったアブラゼミは殻を抱くように体制を整え始め、やがて
安定ポジションを確保して翅をゆっくり展開し始めた。

脱皮完了から30分、翅が伸びてアブラゼミの形が整ってきた。
深夜1時、アブラゼミの誕生をアマガエルの子供が不思議そうに見上げていた。

翌朝、羽化の場所にアブラゼミの姿はなく、脱皮殻が地上に落下しているのを
確認。近くでアブラゼミが鳴きだした。きっと今朝方ここを飛び立っていった
やつだろう。短い地上での最後の時間が、今日始まった。

【撮影データ】 25/Jul/12 D90+60mmMacro