オオムラサキを見ての帰り、山頂を少し下って暗い森に入ったところで妻が突 然足元を指さした。「鳥じゃない?」 どれどれと覗き込めば、なるほど、体長10センチほどの小さな茶系の鳥が見 えた。 薄黄色の眉班がしっかり目だつこの鳥はウグイス科に違いなかった。ウグイス では無いことはすぐに分かって、ムシクイの仲間だろうと目星をつけて撮影準 備を開始。こちらがバタバタしている間も、相手の鳥は飛び立つことをしない。 くちばしに虫をくわえており、その様子から、ヒナに餌を与えようと巣に入る 直前を人に見つかったといったところだろう、 帰宅後の調べで、この鳥はヤブサメと分かった。ムシクイとの決定的な識別ポ イントは「短い尾」である。その目で全体のシルエットを見れば納得できる。 英名はそのまんまの Short-tailed Bush Warbler 。短い尾のウグイスと いう意味だ。 春のわりと早い時期、ヤブサメは南から渡ってくる。藪の中から「シシシシ…」 と高周波で鳴く。この声が聞えなくなれば歳をとった証拠だと野鳥仲間から聞 いた。私はまだ大丈夫だが、最近ヤブサメを聞かないと言っている仲間のY氏 の耳はどうやら怪しい。滅多に姿を見せない鳥だけに、今回の出会いは嬉しい ものとなった。見つけてくれた妻に感謝。 【撮影データ】 30/Jul/06 豊岡市 D2X+VR300F2.8 |