ブッポウソウという鳥はややこしく、バーダーの間では「声の」と「姿の」と いう接頭語をつけてブッポウソウを話題にする。夜、深山でブッポウソウと鳴 く鳥がいて、おなじエリアで日中に目撃された美しい鳥に、鳴き声と同じ名を 与えたという逸話。しかし、ブッポウソウと鳴く夜の鳥は、全くの別種のフク ロウの仲間であることが判明。この鳥はコノハズクと命名され、鳴き声の誤認 で命名されたブッポウソウは、そのまま正式和名として残った。 「声のブッポウソウ」(コノハズク)も「姿のブッポウソウ」(ブッポウソウ) も、但馬エリアでは極めて少数の希少種。コノハズクは夜の深山に入ることで 声だけは聞くチャンスがある。ブッポウソウも、今まで真面目に探していなかっ たこともあるが、今回ようやく巡り会うことができた。 雨の日の早朝、狭い谷間は薄暗い。めぼしをつけていた枯れ木で、一羽のブッ ポウソウが雨をしのいでいた。前回の初認時には、スコープの視野に入れた途 端飛ばれてしまった。今回はじっくりと観察する時間を与えてくれたが、撮影 には厳しい条件だった。シャッター速度が上がらない中、なんとか見られる一 枚がこれ。雨で濡れた羽根を膨らませている。黒い頭に橙色のくちばし、体全 体が深い青緑色の羽根に覆われた美しい鳥は、同じブッポウソウ目のカワセミ の華やかさとは一味違う奥ゆかしさをたたえている。飛翔もフワフワと優雅で 風切の白いラインがよく目立つ。 山に入って野鳥観察を行った後、雨のあがった帰り道に、同じ場所でこの個体 と再会することができた。トップ写真はその時のショット。後ろからのショッ トでブッポウソウの全体の様子がよく分る。くちばしの先端がわずかに黒いこ とにも注目。 英名のBroad-billed Rollerは「太いくちばしのブッポウソウの仲間」とい う意味になる。この仲間は、オスがメスの回りをローリング飛行しながら求愛 行動を行うらしい。これがローラーの名の由縁。かつての但馬エリアでは、木 製の電柱に営巣するブッポウソウがしばしば観察されたという。電柱がコンク リートになり、昆虫を餌とする彼らの生息環境も限られたものになってきた。 兵庫県レッドデータブックAランクのブッポウソウが棲む但馬の森を、私たち はこれからも大切な宝物として誇りにしてゆきたい。 【撮影データ】 28/Jun/03 城崎郡, COOLPIX5000+TSN-824M |