春先から鳴き始めるウグイスだが、野鳥の中でも最もロングランの歌うたいで ある。繁殖期を終えた夏鳥たちが殆ど成りを潜めた盛夏でも、ウグイスは頑張っ て囀りを続けながら、自分のテリトリを宣言している。 声はお馴染みのウグイスだが、その姿を見た人は多くないはず。彼らは英名の 示す通り、大概がブッシュに隠れて行動するからだ。しかし、今ごろの季節の ウグイスの事情は少し違うようで、よく目立つ枝で囀っているところに出くわ すことが多い。テリトリ内のメスやヒナを守るための、決死の見張り役といっ たところなのかも知れない。 さて、鳥はどのようにして囀るのだろう。人間のように声帯は持っていない。 実は気管から口の間に鳴管(めいかん)と呼ばれる袋があって、ここに溜めた 空気をうまくコントロールして笛の原理で音を出している。まあ、イメージと しては小さな「バグパイプ」を喉の部分に持っていると思えばいい。 ウグイスのホーホケキョ、実は「ホーホ」と「ケキョ」で音の出し方が違うの だという。「ホーホ」は息を吸いながら音を出し、「ケキョ」は溜めた空気を 出すときに出る音。だから「ホ〜」+「ホケキョ」と音を分解するのは間違い。 谷渡りと呼ばれる「ケキョ・ケキョ」だけのフレーズを出すことで納得がゆく。 「ホーホ・ケキョ」と鳴いているときは、ウグイスは落ちついて呼吸をしなが ら歌っているとき。「ケキョ・ケキョ」を繰り返すときは、何か危険を感じて ハァハァと息を連続で吐きながら緊張しているときなのだ。 囀りのシーンを撮影するとき、「ホーホ」の時にシャッターを切るとブレずに 済む。つまりこの部分のウグイスの動作はスロー。「ケキョ」になったときに は大概ブレてしまうほどに動作がクイックなのだ。「ホーホ」の時のウグイス の喉を見ると、中の鳴管の膨張の様子がわかる。フレキシブルに鳴官が動くよ うにだろう、喉の部分の毛が粗で、間から丸く膨らんだ皮膚が観察される。 このような観察ができるのがデジスコ撮影のよいところ。風景の中の鳥写真で は分らないことが、自分の目で確かめられるのだ。ウグイスがいわゆる鶯色で は無いことは既にここで一度書いた。濃いオリーブ色というか茶褐色というか、 背中を向けたシーンで、そのことをもう一度確認しておこう。 【撮影データ】 21/Jun/03 香住町, COOLPIX5000+TSN-824M |