朝から素晴らしい青空が広がっている。テレビではシドニーオリンピック。
日本とアメリカの野球は、松坂が力投を続けている。このままオリンピック
観戦もよいけど、こんな気持の良い日の午後は、やっぱり山を歩きたい。
昼食を済ませ、今日は珍しく積極的な妻たじまと二人で車を出した。
午後の短い時間での山歩き、行き先はとりあえず阿瀬渓谷にと決めていた。
刈り取りの終った田んぼ道を突っ切るバイパス道の先、進美寺(しんめじ)
山の鋭角的な山頂が、青空を背景にくっきりと見えていた。
「シンメジもいいなぁ」 私の一言に、この山は未踏の妻たじまが、登って
みたいと言う。「じゃあ」ということで、その場で行先を変更した。
江原を抜けたところでR312を左に逸れ、赤崎橋を渡る。落ち鮎狙いの釣
師が、橋の上や、瀬の中に幾人か居た。村に入る手前の道端に車を止める。
私はスコープと三脚、妻たじまは飲み物とおやつだけをザックに入れて歩き
出す。左奥の進美寺山の麓では、バイパス道取付けのためのトンネル工事が
進んでいる。このあたりの風景も、2・3年後には変わってしまうのか。
赤崎集落から山に向う |
観音堂へのトラバース |
村の神社の横から山に入る。イノシシが暴れた跡だろうか、しばらく道が荒
れている。石段を登りきって本格的な山道となるが、昔からの進美寺への参
道であり、今も気持ち良く歩ける。時折道を塞ぐジョロウグモの網を払いな
がらゆっくり進む。高度順応がどうたらこうたら、今読んでいる山岳小説を
ネタに妻たじまがギャグをかます。
20分ほど歩いたところで、見晴らしのよい場所に出る。標高160mあま
り。お参りの人も、おそらくここで一服したのだろう。眼下に広がる風景を
見下ろしながら、一息つく。ここからおよそ15分で、山頂と寺との分岐に
出る。左に向い、山腹をトラバースして進美寺へ。麓から45分ほどの歩き
だが、未だ林道が無かった頃、この参道を行き来するのは結構な労力だった
ろう。
北の展望 |
歴史を残す観音堂 |
境内にはお爺さんが一人居た。林道経由で上がって来られ、ここでスケッチ
をされているようだった。この山に詳しい人らしく、白山神社(山頂)への
道を丁寧に教えてくれた。
庫裏にはユースホステルの看板があったが、住む人の居なくなった今では、
利用はされていないのだろう。この建物の北側は開けていて、豊岡方面の展
望がよい。但馬空港の滑走路の向こう、先日歩いた来日岳がポッコリと見え
ている。
両側に立派な仁王を従えた山門をくぐる。観音堂の彫り物もたいそう立派で
あり、その昔、勢力のあるお寺であったことが覗える。堂の周りを一周。裏
手には小さな池があり、水中にはイモリが動いていた。右手の白山神社を示
す道標に従い、山頂に向う。
見事な彫り物 |
進美寺山(白山)山頂 |
目に付いた花といえば、ミズヒキ、ヤマジノホトトギスくらい。夏から秋へ
と向う山は、少し寂しい風景だ。約10分で麓からの登山道に合流。素朴な
木の鳥居が建っている。この先、山頂までは、下から見上げる三角ピークの
突端を登る感じがよく分かる。雑木の間から、空が近い。
山頂直下の、西に開けた場所からの展望が良い。足元に円山川、江原の街並
み、目を上げれば、但馬ドームの白い屋根と、神鍋高原の山並みが見渡せる。
西にかかった薄い雲は、もう秋のものだ。山を渡る風は爽やかである。
進美寺山は白山とも呼ばれることを最近知った。その山頂に奉られるのが白
山神社。神社といっても、小さな祠があるだけのものだが、長く信仰されて
きたのだろう。無展望の山頂で休憩。南の麓から、運動会の応援の太鼓が聞
こえてくる。お茶を飲みながら、仲間のYさんに登頂メールを送信する。
そろそろキノコの季節 |
ミズヒキ |
帰りは登山道をまっすぐ下る。木の鳥居の分岐からしばらくは、あまり歩か
れていないらしい。昨春、シュンランを見つけた場所を教えながら、ゆっく
りと下る。妻たじまが、今日の山歩きは物足りないと言う。「おやつ登山」
だとのたまう。私には結構な運動だったが、それを口に出して言うのを止め
た。
背中でケータイがメールの到着を報せた。休憩時にチェックすると、Yさん
からだった。MTBで円山川堤防を走っているらしい。おそらく、堤防の上
から、今我々の居る進美寺山を見上げたことだろう。ケータイという、妙な
連帯感が、今、人の関係を繋いでいる。
さて、次はどの山を歩く? こんどはきっと、もっと長く歩こう。
二人だけの山歩きが十何年ぶりかに戻ってきて、2000年の秋が始まった。
【 登山日 】00年9月17日(日)
【 目的地 】進美寺山(361m)
【 山 域 】但馬
【 コース 】日高町赤崎地区よりピストン
【 天 候 】快晴
【メンバー】妻たじま&たじまもり
【 マップ 】持たず(2.5万図「江原」参照)
【 タイム 】自宅12:34…赤崎P13:08-12…展望場所(160m)13:30-33…
道標のある分岐(260m)13:47…進美寺(285m)13:56-14:05…
木の鳥居(295m)14:14…進美寺山(355m)14:22-14:32…
道標のある分岐(260m)14:55…村のお宮さん15:28…P15:36
(注:標高は腕時計組込みの高度計の指示値)
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