ガソリンが無いことに気づき、市内の行きつけのガソリンスタンドに向かっ
た。予定の依遅ヶ尾山に向かうにはちょっと時間が遅かった。友達とテニス
の約束のあった息子たじま/YUUを置いて、家族4人で山に向おうとしている。
今年の歩き初め、近場でゆっくり足慣らしとゆくか。心はもう隣町の進美寺
山(しんめいじさん)に向いていた。きっとシュンランにも会えるだろう。
給油中に携帯メールが入った。仲間の萬屋さんからだった。進美寺から須留
喜山に登っているとのこと。なんたる偶然。我々もこれから進美寺山に向う
ことを告げた。ランチタイムはお寺で会えるかもしれない。
赤崎橋を渡り、村に入る手前の広い路肩に車を置かせてもらう。お宮さんの
前から山道を辿る。苔むした石の階段が終ると、サクサクと落ち葉を踏みし
めながら気持ちよい道が続く。スミレの花があちこちに咲いている。アセビ
の白い花房を振り返ると、奥神鍋スキー場の残雪でまだら模様となったゲレ
ンデが霞んで見えた。
タチツボスミレ |
アセビ |
登りながらシュンランを探すがどこにも無い。未だ早いのか、盗掘にあった
のか。一汗かく頃、お寺と山頂への分岐に到達。いつも通り、左のトラバー
スをお寺に向う。すでに萬屋さんはお寺に到着している旨のメールが、登り
始めてすぐに入っていた。
お寺の手前で、待ちかねた彼からの電話が鳴った。後2分で到着と告げる。
お寺の下の斜面には、ミヤマカタバミの白い花が綺麗に咲いていた。写真を
撮るうちに、遅れていた女性陣も追いついた。4人そろってお寺の境内に出
れば、30分あまりも我々の到着を待っていてくれた萬屋さんが笑顔で迎え
てくれた。
ミヤマカタバミ |
紅梅の境内でランチ |
さっそく紅梅の下でランチタイム。お昼までに下山を予定していた萬屋さん
は食料を持ち合わせてないという。我々の食料をシェアして、一緒に時間を
過ごすことに。須留喜山は、本堂の裏手からら明瞭な道が続いているとのこ
とだった。未踏峰なので、今度一度歩いてみよう。
1時間あまり話が弾んだ。彼はお寺への林道の途中まで車で上がってききた
とのことで、そちらに向って下山して行った。我々はここから15分ほどの
進美寺山山頂をめざす。雪囲いの残った本堂の傍では、キンキマメザクラの
小さな花が早い春を告げていた。
進美寺本堂 |
キンキマメザクラ |
山頂はいつも通りの殺風景な佇まい。長居は無用。見下ろす日高町の町並。
工事中のバイパス道路が新しい風景を作ろうとしている。
お寺への分岐を右に見て直進。たしか、この前はこのあたりでシュンランを
見つけたなあと妻たじまに話かける。歩きながら、「これ?」と冗談で彼女
がストックで指した植物を見て驚いた。大当たりである。シュンランだった。
あまりの偶然を二人で笑い合いながら、3株がかたまって咲いていたシュン
ランを観察する。みずみずしい黄緑色、白に混じった淡い紅色。山の春をひっ
そりと喜んでいるかのようなシュンランの花は、清楚で美しい。
シュンランは、結局ここだけしか見つからなかったが、今シーズン初歩きの
よい思い出となった。
山頂直下から見る日高町の風景 |
登山口の看板 |
帰り道、赤崎の河原に寄ってみた。普段は工事車両が入っているようだが今
日はお休み。工事が進んでから初めてこの河原に入ったが、あまりの変り様
に驚いた。橋桁工事のために川の流れが変えられて、カヌーでよく利用した
丸石の河原はすっかり消滅していた。
円山川を渡る新しい橋、進美寺山の下を掘り抜いた新しいトンネル。人の生
活はますます便利に快適になるだろう。しかし、無くしてしまった風景や、
その風景の中で長々と命を繋いできたものたちへ、我々はどう言い訳すれば
よいだろうか。
砂の土手にカンゾウの新芽が出ていた。今日のお土産に少しだけ摘んで帰る。
夕食に妻たじまが沿えてくれたカンゾウの酢味噌和えは、この季節ならでは
の早春の味わいだった。箸を運びながら再び変わり果てた赤崎河原のことを
思い浮べれば、カンゾウの味もすこしほろ苦かった。
【 登山日 】02年3月17日(日)
【 目的地 】進美寺山(361m)
【 山 域 】但馬
【 コース 】日高町赤崎地区よりピストン
【 天 候 】うす曇り
【メンバー】妻たじま、娘たじま、こたじま/GEN、たじまもり
【 マップ 】持たず(2.5万図「江原」参照)
【 タイム 】自宅10:54…赤崎P11:40-45…展望場所12:06…
進美寺12:35-13:30…進美寺山13:47-52
お寺への分岐14:10…P14:38