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晴れの予報だが、前日からの黄砂に覆われて上空の様子が分からない。黄砂は 春のものと相場が決まっているが、晩秋の黄砂というのも奇妙なものだ。ドー ムで大きなイベントが始まろうとしている神鍋を越える。 上山高原に出ても青空はない。黄砂なのか雲なのか分からない。途中の展望ベ ンチではお年寄り4人の記念写真のシャッターを押した。渡されたカメラが、 レンズ付きフィルムカメラ。歪んだプラのファインダーに、コチっというシャ ッター音が懐かしい。シャッターを頼まれたことが妙に嬉しかった。 いつもの小ズッコ小屋からのアプローチを今日はパス。そのすぐ先の河合谷口 からの初アプローチとした。初めての河合谷口登山口は、予想以上に整備され た場所で驚いた。10台くらいの車。鳥取ナンバーのワゴンタクシーも客の帰 り待ちをしていて、賑やかな山中が想像できた。 広場から少し林道を進むと登山道入口がある。いきなりの急階段で尾根に取り 付く。右手に開けた伐採地を見ながらの歩きは、小ズッコ小屋からのアプロー チに比べて何か味気ない。25分で小ズッコ小屋への分岐、後は歩きなれた道 を行く。片足駝鳥のエルフに迎えられると、いよいよ小ズッコブナ林の真髄で ある。ブナ林の林床では5〜6人の若者グループが賑やかに藪を漕いでいる。 手に持った道具から、キノコ狩りだとわかる。 ブナの黄葉はすっかり終わり、腐葉土の上に今年の落ち葉が積み重なった。そ れを靴でカサコソと蹴散らしながらブナ林歩きを楽しむ。小ズッコピークに差 し掛かる手前で5本立ちのブナの根元に眠る父の魂に再会を告げる。妻がキャ ンディを一つ土の中に埋めた。 目に付くのはキノコくらい。ウソの声がときおり聞こえる。大ズッコのピーク を下り、鞍部から最後の登りにかかる。展望台からは大山が霧の上に浮かんで 見えていた。予報に反して、今日の天気は曇りだった。霧のように立ち込めて いるのは黄砂の層なのだろう。すでにお昼を回っているのに奇妙な風景だった。 道中何組かの下山パーティとすれ違って辿りついた山頂。最後の二人連れが入 れ替わりに下山してゆき、私たちだけの山頂となった。オニギリと、お湯を沸 かしてカップ麺の昼食。南の氷ノ山も霧の上に浮かんで見えた。太陽があれば ゆっくりもしただろうが、曇り空の山頂は吹き上げる風が冷たい。30分ほど で来た道を下山開始。 帰路は順光側になるので、往路では光に紛れていた山の色が映える。冬支度前 の燃え残りの表情を見せる山もよい。ブナの落ち葉をサクサクと踏みながら、 それはいつしか歩調にあわせたスウィングに変わる。 若者たちは同じ場所でまだキノコを採り続けており、笑い声や歓声でひとしき り森が華やいだ。小ズッコ小屋分岐を見送り最後の階段で林道に飛び出た。 道路脇をホッピングしてゆく鳥がいた。ハギマシコだった。 広場の東屋にはツーリングの若者が集まっていた。山水を汲んでお土産にする。 ショウブ池の紅葉はいつもの撮影ポイント。枯れ具合が美しい。上がるときに 見えた道路脇の名も無き滝に寄ってみる。振り返った紅葉が美しい。海上の集 落が近くなる。農耕地を見下ろすポイントで谷向こうの山並みを望む。黄砂は なおも低く立ち込めて、紅葉の山にベールを掛けたままだった。 ※Nikon D90+SIGMA10mmFE,SIGMA17-70MACRO 【 登山日 】10年11月13日(土) 【 目的地 】扇ノ山(1310m) 【 山 域 】但馬 【 コース 】河合谷口よりピストン 【 天 候 】快晴 【メンバー】たじまもり+妻たじま 【 マップ 】持たず(エアリアマップ「氷ノ山」参照) 【 タイム 】河合谷口P11:00…分岐11:25…扇ノ山ピーク12:40-13:10…P14:35 |