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ブナの森に眠れ、扇ノ山



色づくブナ林

いつもより1時間ほど早くスタートした。本当はもっと早く歩き出したかった
のに、布団のぬくもりの誘惑に勝てなかった。申し分のない快晴。予想に反し
小ズッコ駐車スペースは我が家の車だけ。靴紐を締め、ゆっくりしたペースで
歩き出す。

小ズッコ小屋までのアプローチ、ブナの紅葉が見事である。ブナの実を口に入
れた妻が「おいしい」と一言。森の動物たちにも、この秋は御馳走がたっぷり
とあるようだ。やがて河合谷からの登山路と合流し小ズッコのブナ林に入る。
片足駝鳥のエルフと子どもたちと名づけた変形ブナが、この森の門番である。

尾根を南向きに辿る登山路、差し込む光にブナの影が長く伸びる。標高を上げ
るほどにブナは葉を落とし、白い木肌を際立たせている。路傍の秋の花は終わっ
て、倒木にキノコを見つけるくらい。森の中を縫うように飛び去った猛禽は、
おそらくクマタカだったろう。時々アトリの声も聞こえてきた。

さて、亡き父の愛した扇ノ山。氷ノ山、蘇武岳に次いで3番目の散骨場所をこ
の小ズッコの森と決めていた。訪れるたびにその場所を思い出すよう、特徴的
なブナの木を探しながら歩いてきた。5本立ちのブナを見つけ、この根元に埋
めてやることにした。シャベルを入れると、掘っても掘ってもブナの腐葉土だ。
この森全体がブナの大地なのだ。白い小さなカケラを穴に入れ、行動食のキャ
ンディと一緒に埋め戻した。水を注ぎ祈る。父の魂よ、ブナの森に安らかに。

大ズッコのピークの南斜面は若いブナで華やいだ風景。最後の登りに掛かると、
お昼を終えた登山者とすれ違う。展望デッキからの遠望は霞んでいた。1年ぶ
りの扇ノ山山頂。何組かのパーティがいた。妻が作ったお握りとカップ麺で昼
食。上空は雲ひとつない秋晴れである。9月に登った氷ノ山が少し霞んで見え
ていた。

食後のコーヒーを沸かし、八東町からのルートから一団体が賑やかにやってき
たところで来た道を下山開始。小ズッコに入ったところで1本のブナに気を向
けた。レンズをズームに替えて黄葉*を撮る。小ズッコのブナ林*を普通に撮る。
でもやっぱり魚眼レンズが面白い。見慣れたブナのオブジェも、魚眼で狙うと
新鮮である。

いつも見過ごしているこのスギの大木は、アシウスギというスギの変種だそう
だ。大きく開いた樹洞は、動物たちのねぐらにもなるのだろうか。落ち葉をサ
クサク踏みしめながら最後のブナ林歩きを楽しみ、森の門番をポンポンと手で
叩いて来年の再会を約束する。

小ズッコ小屋を過ぎ、斜陽に輝く紅葉にレンズを向けてから車に戻った。朝と
同じように他の駐車はなかった。車での下山途中、上山高原でナナカマド*の
赤い実を撮ってから、ススキの高原*を後にした。

※Nikon D90+SIGMA10mmFE,*SIGMA17-70MACRO

 【 登山日 】09年10月31日(土)
 【 目的地 】扇ノ山(1310m) 
 【 山 域 】但馬
 【 コース 】小ズッコ小屋よりピストン
 【 天 候 】快晴
 【メンバー】たじまもり+妻たじま
 【 マップ 】持たず(エアリアマップ「氷ノ山」参照)
 【 タイム 】小ズッコP10:50…扇ノ山ピーク12:30-13:00…P14:25