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カタクリを守れ、三川山



カタクリ

県民局の環境担当と地元の方々とで、三川山山麓のカタクリ自生地の現状を見て
回った。ガイド役は私が引き受けた。自生地1自生地2と、花は終わっていた
が、そこそこの株数が確認され、今後のシカの食害に備えての防御策が検討され
る。急斜面でいつも雪崩が起きている場所なので、ネットの設置などに技術的な
課題が残る。

Sさんと我が夫婦の3名は、そこから中腹の自生地を目指す。過去の記録を見れ
ば2011年以来の登山であり、4年ぶりの三川山歩きとなった。歳をとったが、
厳しい岩尾根を登る足はまだ大丈夫のようだ。足元のオオイワカガミに励まされ
ながら、一気に高度を上げる。

シャクナゲは裏年に当っているようで、ほとんど花を付けていない。Sさんによ
れば、この痩せ尾根にもシカが入ってシャクナゲの若芽を食害しているらしく、
食痕を確認することもできた。花付きの悪さはシカの影響もあるかもしれないと
のこと。また、何本かのヒメコマツも枯れており、これもシカの影響が及んでい
るのだろうか。

シャクナゲは残念だったが、新緑の眩しさはいつもと変わらない。林床がシカで
すっかり荒らされているとしても、谷越しに見渡す広葉樹林は美しい。急登を終
え、荒れたトラバースをゆく。お気に入りのブナ林を見下ろして、目的地に到着
した。カタクリ群落地の様子は悲惨で、10年前の同じ場所の写真と比べると、
林床の緑がすっかり失われてしまったことが分かる。シカの食べないテツカエデ
がポツン・ポツンと残っているだけの異常な世界。4年ぶりのカタクリ登山は、
変わり果てた現実を確認する作業でもあった。

それでも、ところどころにカタクリは生き残っており、可憐な花を咲かせている
のだった。あちこちに沢山咲いていたキクザキイチゲも、ようやく一輪の開花を
見ただけ。斜面を探してカタクリの開花数をチェック。それでも50株ほどはあ
っただろうか。唯一の群落も5株ほどが固まって咲いているに過ぎない。
ツボミも見つけた。

この群生地まで人による保護策が打たれるのかどうか分からないが、地下に眠る
カタクリの命が、やがてシカの圧力が弱まったときに、再び勢力を復活させてく
れることを信じようと思う。その時にまだ山に登る力が、自分の中に残っていて
くれることを願いたい。

山を下りながら春の花を探すが、イチリンソウも、エンレイソウも、スミレさえ
も、レンズを向けようという気になるほど咲いていない現実に愕然とする。スギ
の落ち葉の中にジムグリがいた。地面の緑は、シカの食痕だけである。
三川山で困ったことが起こっている。その現実を噛みしめながら帰途についた。

 【 登山日 】15年4月18日(土)
 【 目的地 】三川山
 【 山 域 】但馬
 【 コース 】三川権現よりピストン
 【 天 候 】晴れ
 【メンバー】Sさん、たじまもり夫婦
 【 マップ 】持たず(エアリアマップ「氷ノ山」参照)
 【 タイム 】権現10:00…カタクリ自生地11:50-13:00…権現14:00
 ※撮影:D7000+VR18-200,SP90