トップ>たんたん山ある記>三川山>このページ
今回は単独だ。だからハイキングというタイトルはふさわしくないかも知れな いけど、私の年中行事だからそういうことにしておく。足元は長靴。厳しい尾 根歩きには登山靴がよいに決まっているが、今日は長靴で歩くことに決めた。 三川権現社前に車を置き、10時ちょうどに歩き始める。上の駐車場に2台の 車。先客ありか。いつもどおりに登山路入口で迎えてくれるミツマタを撮る。 ここ数年はずっとニコンのCoolpix5000で撮ってきたが、今日はD2Xと決めてい る。レンズはSIGMA17-70MACROをつけ、背負ったザックには300ミリを入れてき た。花メインで、夏鳥でも出たら狙おうという算段だが、結局300ミリは担いで 回っただけで一度も着けることがなかった。重いだけだった。 スギ林の林床ではミヤマカタバミが花を開こうとしており、堰堤を超えるまで にキケマン、サンインネコノメ、エンレイソウにレンズを向けた。快晴、渓流 の音を全身で受け止めながら道々の春の花を撮ってゆく。 ヤマルリソウ、マムシグサ、オオタチツボスミレ。ニリンソウは開いたばかり のが数株。ほとんどがつぼみを閉じている。 Aコースのシャクナゲ尾根に掛かるとすぐに息が上がる。長靴の中で足が遊び、 地面へのグリップが弱い。やはり岩尾根を登るには登山靴に限る。ミソサザイ は鳴くが期待したクロツグミやオオルリの声は聞こえない。夏鳥の到着にはい ま少し早かった。いつもの撮影ポイントで堰堤を振り返る。今年のシャクナゲ は裏年にあたっている。昨年の落花跡が残っている以外は、花芽はまったくつ いていない。 シャクナゲ尾根を上りきるとめまいがしそうだった。普段の運動不足は年齢を 重ねるごとにこんな場面で出てくる。トラバースを歩きながらゆっくり呼吸を 整えてゆく。そのころには上と下の斜面にカタクリの花を見つけていた。例年 ならカタクリの咲く時期には雪渓が残っているはずなのに、どの谷にも雪はまっ たく無い。尾根ではつぼみばかりだったオオイワカガミが日当たりのよい斜面 に咲いていた。 カタクリ群生地には予想どおり先客が一人いた。駐車場で見た別の1台は渓流 釣りだった。私より年上らしき中年男性は山岳写真を専門にやっていると自分 を紹介した。近く写真展をするからと案内状もくれた。私の名前を明かすと、 ときどき新聞などで見て知っているとのこと。ここのカタクリ、満開には少し だけ早かったことを二人で確認しあいながら、あとは思い思いにシャッターを 切った。いつも同じパターンの写真しか撮れないが、これとかこれとか、カタ クリの咲く森の雰囲気は伝わるだろうか。 今日は一緒に来れなかった妻にカタクリの咲いた春の喜びを伝えたくて、携帯 電話のカメラで撮って現場から画像を送信した。すぐに「ありがとう」の返事 がきた。ギフチョウがいくつか飛んできたが、早い飛翔で過ぎてゆくだけで、 カタクリを吸蜜する様子も無かった。 コンビニおにぎりを食べたあと引き返す。好きなブナの森も春の芽吹きが始まっ ていた。尾根を下りながら、ようやくシャクナゲのつぼみを見つけた。後にも 先にも、この株だけだった。藪の中でヤブサメが鳴いた。この高周波が聞こえ るから、耳のほうはまだ大丈夫だ。 尾根を下りきるとBコース方面に向かう中年夫婦と出会った。見てきたカタク リの様子を伝えると、マスクをした奥さんの方が今日は風邪をひいているので 上に行くのはやめたとおっしゃる。こっちの谷にもカタクリがあるとのことな ので、お二人の後について探索に行ってみた。登山路から外れた谷をしばらく 入ると、うつむいて慎ましやかに咲く一輪を見つけた。これ以上お二人の邪魔 をせぬよう引き返す。 ニリンソウの花が帰り道には目立つようになっていた。ミヤマカタバミも花び らを広げていた。前々から気になっていたカタクリの群生地を探してみること にした。沢を渡るのに長靴がちょうどよい。ワサビを見つけた。ほどなくポツ ポツとカタクリを見るようになり、ひとつの斜面でまとまって群生している場 所を見つけることができた。なるほど、ここか。急な斜面にはいくつかの踏み 跡があり、撮影のために人が入った形跡が残っていた。わざわざきつい山登り をせずとも、ここなら簡単にカタクリが見れることが分かった。でも、中腹の 群生地まで歩くその行為自体が楽しみでもある私は、来年も同じ道を辿ること だろう。 堰堤の手前、コンクリートの上で休んでいたオシドリのペアに気づかず、目の 前で飛ばれてしまったのは残念だった。オシドリは森で繁殖期を迎えている。 三川権現社のまわりを散策すると、朝見かけた若いアベックが同じ場所にいた。 男性のほうが竿を振っていて、コート姿の女性はサポーターに徹している様子。 なかなか辛抱のよいことだ。石垣にアオダイショウがとぐろを巻いて日向ぼっ こ中。車に戻り、来がけに買っておいた栃餅をひとつ食べて小腹を充たす。 神社で手を合わせたあと、車を出した。朝の天気は早くも下ろうとし、夕方近 くには予報どおりの雨となった。 【 登山日 】07年4月8日(日) 【 目的地 】三川山 【 山 域 】但馬 【 コース 】三川権現よりピストン 【 天 候 】晴れ 【メンバー】たじまもり 【 マップ 】持たず(エアリアマップ「氷ノ山」参照) 【 タイム 】権現10:00…カタクリ自生地11:00-11:45…権現13:00 ※撮影:D2X+SIGMA17-70MACRO |