紅葉まつりの天滝を訪ねる


 朝霧が晴れて二日続きの秋晴れの青い空が広がった。昨日登った扇ノ山で痛
 めた右膝の筋が痛い。友達と遊びの約束があるこたじま/KAOを残し、4人で
 出発。まずは実家に寄って母たじまを拾う。阿瀬渓谷にしようか、天滝にし
 ようか、まだ行き先は決めていなかった。母たじまを乗せ、車を動かしたと
 ころで父たじまを残してきたことを母たじまが残念がった。すぐにUターン。
 父たじまも車の人となった。

 最近はめっきり足の弱った父たじまであるが、こうして一緒に歩くのも数年
 ぶりのことになる。車を走らせながら、行き先を天滝に決める。3世代たじ
 まもり族を乗せた定員オーバー(^^;のレガシーは、秋の色づきが始まった大
 屋の谷をさかのぼる。大屋町には天然記念物指定の巨木が多い。かつて調査
 にあたった父たじまから、道中に点在する巨木の説明を聞く。

 天滝口で係員に制止され、これより上は満車で入れない由。近くの駐車場に
 車を止め歩き出す。縦列駐車の車の列は天滝公園まで途切れなく続いた。普
 段は駐車場のスペースには紅葉まつりの出店のテントが並び、ブルーシート
 の即席桟敷席では家族連れが輪を作ってお昼を楽しんでいた。我々もまずは
 腹ごしらえ。みんなでうどんをすすり、私は缶ビールに焼き鳥。母たじまが
 黒豆の枝豆を買ってきた。こりゃ美味いわ。地元の爺さんのカラオケが始ま
 ったところで腰を上げた。

 車道を20分歩いて登山口。父たじまの足取りは、なんのなんの、まだ行け
 るじゃない。と、この時は思ったのだが… 渓流沿いの山道はしっかり整備
 されている。今日は好天と紅葉まつりも手伝って、ものすごい人出だ。ひっ
 きりなしに下山者の列とすれ違う。もちろん、登る人も同じぐらいの列で続
 いている。こんな賑やかな天滝は始めて経験する。年配の姿も目立つ。カメ
 ラを下げている人が圧倒的に多い。

 渓谷の紅葉は少し早い感じだ。目を奪われるような紅葉はまだ見えない。そ
 れにしても、階段道では右膝が痛む。半ば引きずるように足を上げながら、
 なんとか前進を続ける。天滝まで○○mの標識に励まされながら、ようやく
 滝下の東屋に到着。ここまでの行程で天滝の姿を見ることはない。目の前の
 一気に広がるこの瞬間が、この歩道の醍醐味でもある。

 ザックからカメラを取り出し、何枚かシャッターを切る。落差98mといわ
 れる天滝は、真っ青な空から一本の逞しい水流を放出し、末広がりにその白
 い飛沫を大きくしながら落下している。下部の黒い岩に落ちた水が、いく筋
 もの白い筋で流れる様も美しい。滝の周りの急峻な斜面は、ようやく色づき
 始めた木々が、空に映えて美しい。

 妻&母たじまが登ってきて、父たじまが途中でリタイアしたことを知らされ
 る。もっと歳の行った爺さん婆さんでも、しっかり登ってきてるぜ。駄目だ
 なあ、親父も。そんな話をしてると、「あんたも、そんな膝じゃあ、長くな
 いわよ」と妻たじまがキツイ一言を。ホントだなあ。この膝のトラブルは、
 なんとか克服しないといけない。

 もう1ピッチで、神社の奉ってある高台へ到着。狭いスペースに滝をバック
 に記念撮影の人であふれかえっている。神社の先から滝下の岩場に下りられ
 るが、ここにもたくさんの人が陣取っている。こりゃもう、人の滝だ。


 少し休憩してから、元の道を引き返す。半分くらい下りたところで父たじま  が登ってくるのに出会った。休んでいたら冷えてきたので、我々と出会うと  ころまでボチボチ登ってきたらしい。滝にはまったく未練がないらしい父た  じまはここでUターン。みんなで下る。滝から30分で車道に戻る。  車での帰り道、自分達の入る予定だという、建ったばかりのキリスト教会の  墓地に案内される。軟らかな西日を反射した御影石の十字架が、一際浮き立  って見えた。「おとうさんは、円山川に灰を撒いてくれっていうんだけど」  母たじまが言った。三川山に灰を撒いてくれと言っているたじまもりと、こ  んなところでも親子を感じたことに、心の中で思わずほくそえんでしまうの  であった。  【 登山日 】97年11月3日(月)  【 目的地 】天滝  【 山 域 】氷ノ山山麓  【 コース 】大屋町天滝公園よりピストン  【 天 候 】快晴  【メンバー】妻たじま、こたじま/YUU,GEN、父たじま、母たじま、        たじまもり  【 マップ 】エアリアマップ「氷ノ山」参照  【 タイム 】天滝公園P12:15 → 登山口12:35 → 天滝13:15-25 → 登山口13:55 → 天滝公園P14:10                         ○▲▲たじまもり▲▲☆